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【ダニ・ハウスダストアレルギー】 耳鼻科専門医が本気でダニ・ハウスダスト対策を考える。 通年性アレルギー性鼻炎に効果的な「舌下免疫療法」とは?

[2021.05.19]
朝起きると毎回くしゃみ・鼻水がでることはありませんか?

 

 

朝起きると毎回くしゃみ・鼻水がでることはありませんか?
毎朝の事だから、慣れてしまっているかもしれません。
寒くてくしゃみ・鼻水が出ることももちろんありますが、年中同じ状況であれば、ダニ・ハウスダストアレルギーの可能性があります。

コロナ禍の今、学校から健康チェックのために用紙を配布され、毎日の体温や咳、鼻水の有無などを自宅で記載するようなことがあります。自粛中で1歩も外に出ていないのに、鼻水だけいつも「有」に〇がつくことはありませんか?
そのような場合もダニ・ハウスダストアレルギーが疑われます。

※このコラムにおいては、ハウスダストとダニに対するIgE抗体を持つ人の割合がほぼ一致していることから、ダニとハウスダストに対するアレルギーはほぼ同義語として説明しています。(日耳鼻 2002 ,105,(12),1181 アレルギー性鼻炎における昆虫アレルギーの全国調査)

 

「スギ花粉症」の舌下免疫療法は、下記リンクの記事をご覧ください。

【スギ花粉の舌下免疫療法】いつからはじめる?費用は?何歳から?【シダキュア・アレルゲン免疫療法】

 

≪目次≫

1.アレルギーの原因となるダニは?

2.戦う相手を知ろう ~ダニの生態~

3.できることから始めよう、防ダニ対策

4.ダニアレルギーの薬

5.根本的にダニアレルギーを治したいと思ったら「舌下免疫療法」

 

アレルギーの原因となるダニは?

ダニアレルギーは通年性アレルギー性鼻炎だけでなく、気管支喘息やアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患の主要な原因となります。

ダニの中でアレルギーに関連するのは、主にチリダニの一種である「ヤケヒョウヒダニ」と「コナヒョウヒダニ」です。
これらのダニの死骸や糞に含まれるタンパク質がアレルギーの原因となります。

 

戦う相手を知ろう ~ダニの生態~

・ダニって何だろう?

節足動物の一種で昆虫ではありません。どちらかといえばクモやサソリに近い動物です。(ちなみにクモやサソリ、ダンゴムシも昆虫ではありません。昆虫は節足動物門 六脚亜門 昆虫綱(せっそくどうぶつもん・ろっきゃくあもん・こんちゅうこう)に分類される動物で一般的に体が3つに分かれ足が6脚あります)

 

以下「ヤケヒョウヒダニ」と「コナヒョウヒダニ」の説明です。


・増殖時期

湿気の多い6-9月に数が増えます。
ダニは気温25℃、湿度60%になるといっきに増殖し始めるため、梅雨時期に最も増殖に適しています。
また空気が乾燥し気温が低下する冬に減る傾向ありますが、最近は暖房や加湿器により一年中暖かく湿度が保たれた環境が維持されるため、冬でもダニが減少しづらくなってきました。


・大きさ

どちらも大きさ0.4mm程度で肉眼ではほとんど見えません。


・えさ

ヒトの血は吸わず、ヒトの垢やフケをえさとします。


・好きな場所

湿度の高いジメジメしたところを好みます。
体の表面から水分を吸収放散しており、湿度が低いと水分を放散して体重が減少し、湿度が高いと水分を吸収して体重が増大します。コナヒョウヒダニの方が乾燥に強い傾向にあります。


高層集合住宅におけるダニの生息を調べた研究ではコナヒョウヒダニは階数に関係なく10階まで生息が認められ、ヤケヒョウヒダニは4階以上の家庭では極めて少ない結果となりました。


低階層の家庭は湿潤している傾向にあり、高層階の家庭は乾燥している傾向にあるので湿潤環境を好むヤケヒョウヒダニは高層階には少なかったことが考えられます。


・それではどんな床材に多く生息するのでしょうか?

畳、フローリング、カーペットにおけるダニ密度を観測した研究では、畳とフローリングでは大きな差はなく、カーペットではほこりやダニ密度が増える結果となりました。

ダニは畳に多いイメージがありましたが、ほこりのつきやすいカーペットで一番ダニが生息しやすいのですね。


・成長するまで

卵から成虫になるまで30日程度要します。しかし、コナヒョウヒダニは生息環境によっては休眠します。休眠中のダニは乾燥や低温に強い特徴があります。

 

出来ることからはじめよう、防ダニ対策

ダニアレルギーの一番の対策は、ダニやダニ由来のアレルゲンを取り除くことです。

血液検査の結果でダニアレルギーが判明すると、患者さんは「つまり部屋が汚いってことですよね。」「これって部屋を掃除するしかないですよね。」とよく言われます。

人が生活している以上、ダニをゼロにすることは難しいですし、どんなに劣悪な環境でもアレルギーが発症する方としない方がいるので、一概にダニアレルギーは部屋が汚いから発症するものでもないと思いますが、ほこりとダニの量とは相関するため、掃除をすることはダニアレルギー予防のよい対策になります。

 

では、どんなことをしたらよいのでしょうか?

基本は下の1)~9)のようにダニが好むものを「掃除する・洗濯する・思い切って捨てる」です。

1)ホコリ(ハウスダスト)をなくす「掃除機、空気洗浄機、お掃除ロボットの活用」

2)部屋を換気する

3)布団や毛布を丸洗いする

4)シーツや布団カバー、枕カバーを防ダニ仕様に替える

5)絨毯やカーペットをやめる

6)布製のソファーや椅子はダニが生息しにくい素材に替える

7)ぬいぐるみを洗う

8)マスクをする

9)防ダニ用の殺虫剤

 

1)ホコリ(ハウスダスト)をなくす。

 ホコリ(ハウスダスト)の量を減らせば、ダニも減ります。まずは掃除機で床の掃除をすることが重要です。
具体的には寝室や居間、子供部屋の床面を1週間に1回「丁寧な掃除」をし、1日おきに「普通の掃除」をすることが推奨されます。

・「丁寧な掃除」とは?
 →6畳の床であれば約5分間かけて掃除がけ(1m2あたり30秒の時間をかけて掃除)

・「普通の掃除」とは?
 →シングルサイズの敷き布団であれば、片面2分間かけて掃除がけ(寝具の場合、1m2あたり約1分かけて掃除)

 

掃除機以外にも、空気清浄機を設置することも有効です。空気中に舞っているほこりを除去してくれます。
掃除機をかける暇がなければお掃除ロボットも検討すると良いかもしれません。
特にベッドの下など掃除しづらい隙間には「床拭きロボット」であれば薄いのでホコリを取ってくれます。

 

2)部屋を換気する

ダニは湿気が大好きで、乾燥に弱い生き物です。乾燥している冬の時期に部屋を換気しダニの量を減らしましょう。

 

3)布団や毛布を丸洗いする

ダニは布団に多く生息しています。朝起きた時の布団の中はぬくぬくと暖かく湿気もあり、餌になる人のフケや髪の毛も豊富にあるためダニにとって最高の環境です。
就眠中に吸い込むダニアレルゲンを減らすためにも寝具の洗濯は有効です。
ダニのアレルゲンは水に溶けやすいため、掃除機をかけるよりも丸洗いした方がより効果があります。

布団内ダニアレルゲンの除去方法として、

a)掃除機による吸引

b)布団たたきと掃除機の組み合わせ

c)機械式丸洗い

の3法を比較した研究があります。

結果、a)掃除機による吸引とb)布団たたきと掃除機の組み合わせを行った場合、布団内アレルゲン量の減少は40%前後であるのに対し、c)機械丸洗いでは業者によっての差はあるものの、ある業者では除去率は90%以上であったと報告されています。
布団は生乾きだと逆にダニが爆発的に増加するので、高熱処理をしてくれる業者を選ぶことが重要です。

自宅で洗濯可能な毛布や布団の場合は、生乾きのままではダニが増える可能性があるので、洗濯から乾燥までできる大型の洗濯乾燥機があるコインランドリーを利用することもオススメです。
ダニは50℃の環境ではほぼ20分で死滅するので、乾燥機は有効です。比較的割安で出来ますし、ふかふかになって幸せな気持ちになりますよ。

コインランドリーの乾燥機以外でも、布団乾燥機も効果的です。天日干しも乾燥させるという点ではよいと思いますが、内部まで50℃に達することは難しく全てのダニが死滅しない可能性があります。

 

まとめると布団は

・布団洗いの業者に頼む

・大型コインランドリーの洗濯乾燥機を利用

・布団乾燥機を使用

することが有効です。

 

4)シーツや布団カバー、枕カバーを防ダニ仕様に替える

防ダニシーツには大きく分けて2つの種類があります。

  • 防ダニ用の薬剤が付着しているシーツ

防ダニ用の薬剤が付着しているシーツは、シーツの手触りや生地感は通常のシーツと大きく変わりません。薬剤も安全性の高いものが使用されており人体への影響は少ないと言われています。デメリットとしては、洗濯や天日干しにより防ダニ効果が落ちることです。

 

  • 特殊な織り方をした高密度織り生地シーツ

繊維の密度を高くし細かく織ることによって、ダニを通さないシーツです。ダニをシーツの外に通さず、中に閉じ込めることによって防ダニ効果を生みます。デメリットとしては、通気性が悪くなることや手触りに好みがでることです。

 

5)絨毯やカーペットをやめる

ダニは絨毯やカーペットが大好きです。毎日の掃除機掛けも大切ですが、そもそもダニが付着しやすいものは処分できなか検討しましょう。

 

6)布製のソファーや椅子はダニの蓄積しにくい素材に替える
ソファー自体を替えなくても、伸びる生地のソファーカバーでまるごとソファーを覆うことが出来ます。これならソファーカバーを定期的に洗濯することができるので衛生的です。

 

7)ぬいぐるみを洗う

子供のお気に入りのぬいぐるみを洗うことは勇気がいりますよね。
薄汚れてきたことには気づいていても、洗ってゴワゴワになったら子供に大泣きされるし・・・と躊躇ってしまいます。

しかし、布団や絨毯に多く生息するダニがぬいぐるみにいないはずはありません。
まず、ぬいぐるみが洗えるものか確認してみてください。洗濯可能であれば、中性洗剤と柔軟剤を使用して手洗いし、よくタオルで拭いた後にドライヤーで乾かし、ブラッシングして風通しの良いところで乾燥させます。十分に乾燥させないと布団同様ダニは増殖するので注意が必要です。この方法で、我が家のぬいぐるみを洗ったら驚くほどきれいになり、意外と手触りは変わりませんでした。

洗えないぬいぐるみや、洗濯を躊躇される場合は、夏の暑い日に黒いビニール袋にぬいぐるみをいれて封をし、日差しの下や車の中に置くことで、中が高温となりダニを死滅させる方法もあります。ビニール袋から出した後は、掃除機でダニの死骸を吸い取ってください。

 

8)マスクをする
衣替え、布団の上げ下げ、お雛様を出す、押し入れの整理をする、などホコリを多く吸い込む場面ではマスクを着用することが効果的です。

 

9)防ダニ用の殺虫剤を使用する

防ダニ用の殺虫剤としては、防ダニスプレーやくん煙剤などが発売されています。
ダニは寝具の内側やカーペットの中などに潜り込んでいることが多いため、直接殺虫成分に触れさせることが難しいですが、強制的に薬剤をダニに接触させた結果では、コナヒョウヒダニに対して、チオシアノ酢酸イソボルニルやアミドフルメトといった成分は40mg/m2で90%以上の致死率を認めています。

スプレーして終わりではなくスプレーした後に掃除機でダニの死骸を除去する必要があります。あくまで補助的な役割ですが、殺虫剤の成分がダニに当たれば一定の効果が見込めると思います。

 

ダニアレルギーの薬

ダニアレルギーはアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患の原因となり得ます。
原因がダニであれ、スギであれ、これらの疾患に対する対症療法としての処方は大きく異なりません。アレルギー性鼻炎で考えると、アレルギー症状を抑えるためには抗アレルギー剤の内服やステロイド点鼻薬を用います。今あるくしゃみ、鼻水などの症状を緩和するための薬であり、アレルギーによる症状が続く場合はこれらの薬を継続する必要があります。

卵などの食べ物のアレルギーは年齢とともに症状が改善することや、少しずつ摂取することでアレルギーが改善していく可能性がありますが、ダニやスギなどの吸い込むタイプ(吸入アレルゲン)のアレルギーでは吸い込むほどに症状が悪化していきます。

 

根本的にダニアレルギーを治したいと思ったら「舌下免疫療法」

「こんなに掃除するなんて無理!」

「しっかり掃除しているのに、症状が治まらない。」

「このまま抗アレルギー剤を飲み続けるのはやめたい。」

「根本的にダニアレルギーを治したい。」

そういった場合、舌下免疫療法といってダニアレルギーを根本的に改善する方法もあります。2015年からダニの舌下免疫療法が国内で承認され保険適応となりました。

 

舌下免疫療法リンク

 

少量のダニアレルゲンを毎日、舌の下の粘膜から吸収することで体をダニアレルゲンに慣らしていく方法です。
今ある症状を抑える目的ではなく、体をダニアレルゲンに慣らしていくことが目的なので、症状がない日も毎日薬を続ける必要があります。
また、元々アレルギーのあるダニアレルゲンを体に投与するので、初回投与でアナフィラキシーなどのアレルギー症状が出ないか確認する必要があり、初めは院内で薬を服用して30分間院内で観察します。

その後も薬の量が安定したら基本的には月1回の診察が必要となります。
治験の段階では3-5年継続するとその後も数年間は効果が持続すると言われています。

ただし全例で効果があるのではなくおよそ7割の方が効果を実感しています。

2021年5月現在、舌下免疫療法はスギとダニのアレルギーに対してそれぞれ薬があります。スギ花粉症に比べてダニアレルギーの症状は1年通して症状が続くため、舌下免疫療法の効果を実感しやすいという点があります。

5歳からに適応年齢も拡大されたため、子供のうちから始めることもできます。
きちんと掃除をしてもダニを一匹もいなくすることは難しいため、ダニに過敏に反応してしまう場合は舌下免疫療法を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

参考文献
日耳鼻 2002 ,105,(12),1181 アレルギー性鼻炎における昆虫アレルギーの全国調査
家屋内生息性ダニ類の生態および防除に関する研究(4) 吉川翠;家屋害虫 vol.15 No.1,pp.21-32,1993
布団内ダニアレルゲンの除去方法の評価 坂口雅弘,井上栄;アレルギー 40(4).439-443,1991

参考サイト
認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)アレルギー支援ネットワーク ダニアレルギー
殺虫剤を用いたダニ対策 一般財団法人日本環境衛生センター環境生物部
快眠タイムズ

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