【スギ花粉の舌下免疫療法】いつからはじめる?費用は?何歳から?【シダキュア・アレルゲン免疫療法】
花粉症をお持ちの方はゴールデンウイークを過ぎると花粉の事をあまり気にせず外出できて、気持ちよく過ごせる日々がやってきます。
4月までは症状が出ないように薬を飲んだり、外出時にマスクや眼鏡で防護したり、またせっかく天気が良くても洗濯物を外に干せなかったり何かと不便な時期だったと思います。
「花粉症をなんとかしたい!」
「毎年こんなに辛いのは嫌だ!」
「花粉を気にせず外に出たい!」
「花粉症がひどくて、仕事や部活に十分に取り組めなかった」
という方は、スギの舌下免疫療法(商品名:シダキュア)をお勧めします。
※スギの舌下免疫療法は、花粉の飛散時期(1月~5月)でない6月頃から開始できます。
※ハウスダスト・ダニの舌下免疫療法にご興味のある方は、院長コラムの別の記事「ダニ舌下免疫療法」をご覧下さい)
目次
アレルゲン免疫療法とは
アレルゲン免疫療法とは、アレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から投与することによって体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状が出づらい体質に変えていく治療のことをいいます。
スギ花粉症の治療として、古くから皮下注射によるアレルゲン免疫療法は行われていました。
しかし、治療できる医療機関少なく根本的な治療でありながら、注射による痛みや徐々に増量するため頻繁に受診する必要があり広く普及しませんでした。
その後2014年10月から、シダトレンという液体を舌の下に滴下するアレルゲン免疫療法が承認され、痛みを伴うことなく治療を行えるようになりました。
現在(2022年)では液体であるシダトレンから舌下錠であるシダキュアに代わり、より簡便に服用できるようになっています。
2018年12月より5歳以上の小児から始められるようになったため、小児でも根本的な治療を行えるようになりました。
スギ花粉に対する舌下免疫療法(シダキュア)の適応
以下の3項目を満たす方が適応です。
① スギ花粉が飛散している主に2~4月に鼻水、くしゃみ、鼻づまりなどのアレルギー症状があること
② 血液検査でスギ花粉に対する抗体価が上昇している
花粉症の症状があっても抗体価が症状していない場合は適応になりません。
③ 5歳以上の方で、舌の下に飲み込まずに1分間薬を保持できる方
治療に注意が必要な方
以下の方は開始に注意が必要なため医師にご相談下さい。
① コントロール不良の喘息がある方
⇨舌下免疫療法を開始して喘息が悪化する場合があります。
② 悪性腫瘍や免疫系に影響する全身性疾患(自己免疫疾患、免疫不全など)を伴う方
⇨免疫抑制剤やステロイド内服中の方は舌下免疫療法による治療効果が十分に発揮しない可能性があります。
③ 高血圧で非選択的β遮断薬(メインテート、インデラルなど)を内服している方
⇨舌下免疫療法によるアレルギー反応が強く現れることがあります。また、強いアレルギー反応が起きた際に使用するアドレナリンが通常より効かない恐れがあります。
④ 三環系抗うつ薬、モノアミンオキシターゼ阻害剤服用中の方
⇨舌下免疫療法によるアレルギー反応の処置のためにアドレナリンを投与したときに、アドレナリンの効果が増強されることがあります。
⑤ 重症の心疾患、肺疾患、高血圧の方
⇨舌下免疫療法によるアレルギー反応の処置のためにアドレナリンを投与したときに、アドレナリンにより現病を悪化させる恐れがあります。
⑥ 近いうちに妊娠を考えている方、妊娠・授乳中の方
⇨舌下免疫療法の治療が安定している場合は妊娠、授乳中継続可能ですが、開始時期や開始直後に妊娠していることは避けることが望ましいです。
副反応が生じた際のアレルギー反応に伴って遊離されるヒスタミンが子宮筋収縮作用を有することが知られており「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有効性が危険性を上回ると判断される場合のみに投与すること」とされています。
また、治験では5歳~65歳の方を対象としていたため、それ以上の年齢の方は対象外ではありませんが、治療の効果が出づらい可能性があります。
いつからはじめる?~治療の始め方~
スギの舌下免疫療法は、花粉の飛散時期(1月~5月)でない6月頃から開始できます。
スギ花粉症と診断するために、詳細な問診と血液検査でスギ花粉の特異的IgE抗体を測定します。
その際スギ花粉のみではなく他のアレルゲンにも反応があるか調べます。シダキュアは「スギ花粉症」の症状を緩和させますが、同じ春の花粉であるヒノキやハンノキ、通年性アレルギー性鼻炎の原因となるハウスダストやダニには効果がありません。(ハウスダストについては「ダニ舌下免疫療法」をご検討下さい)
治療効果が薄いのか、スギ以外の花粉やアレルゲンに反応して症状が残ってしまっているのか判断するためにも複数項目調べることをお勧めします。
採血が難しいお子様は指先から少量の血液で検査を行う方法もあります。
1年中鼻閉がある方は、アレルギーだけではなく鼻腔ポリープ(鼻茸)や鼻中隔弯曲症が原因である可能性があるため鼻腔ファイバーを行う場合があります。
服用方法
はじめて薬を内服するときは院内で行います。
副作用
副作用はほとんどの場合、服用開始1か月以内に生じるため初期は注意が必要です。
・主な副作用
口の中の浮腫、腫れ、かゆみ、不快感、異常感
唇の腫れ
喉の違和感、不快感
耳のかゆみなど
・重大な副作用
アナフィラキシー
多くの場合は軽症で抗アレルギー剤の併用で症状が治まりますが、重大な副反応としてアナフィラキシーの報告もあります。
アナフィラキシーについて、市販直後調査や特定使用成績調査の集計ではシダキュア(スギ舌下錠)で5例、ミティキュア(ダニ舌下錠)で14例です。
舌下免疫錠の総投与回数がわからないため、アナフィラキシーの頻度は正確には不明ですが、専門家の間では「死亡例はない。またアナフィラキシーの頻度は、1億回の投与に1回程度の割合で報告がある」と言われています。
費用
初回時にアレルギー検査を行った場合は、初診料、処方箋料、検査代でおおよそ7,000円程度(3割負担の方)かかります。
月1回の通院となってからは3割負担の方で700円程度、1か月分の薬代(薬局支払い分)は2,000円程度かかります。
舌下免疫療法を行う前に理解しておきたいこと
舌下免疫療法は花粉症を根本的に治療することができる画期的な治療です。ただし長期間内服する必要があるので、根気のいる治療でもあります。
花粉症の症状を緩和させ、その後もしばらく症状がでないようにするために推奨されている服用期間は3~5年です。
早い方では1シーズン目から症状が軽減する方もいらっしゃいますが、そこでやめるとすぐに元に戻ってしまうと言われています。
またスギ花粉のみに効果があるため、同じ春花粉であるヒノキ、ハンノキなどには効きません。
そのため「スギ花粉の飛散している2~3月は楽に過ごせたけれど、4月になりヒノキ花粉の症状が気になるようになりました。」という場合もあります。
さらに「治療すれば必ず花粉症が治る!」というわけではありません。
一般的に効果を感じた方は7-8割程度で、効果がないと判断される方もいらっしゃいます。
そのため1年継続してもまったく症状の変化がない場合は治療を続けるか相談します。
舌下免疫療法をしていても花粉シーズン中に症状が残る場合は抗アレルギー剤を併用することも多いです。そのため費用対効果を重視する場合は考慮すべきかもしれません。
効果判定は花粉症のシーズンにならないと判断できないので「花粉症を治すぞ!」という意気込みで始め、「とにかく習慣化する」ことが大切です。
子供のうちに始めている患者さんをみていると比較的小学校低学年の子の方が親の管理がしやすいのかスムーズに続けられており、小学校高学年や特に中高生は親がすべて内服状況を把握することができず、飲んだと言っても飲んでなかったり、本人のやる気がないと続かないことが多い傾向です。
都内であれば中学生以下の自己負担はなく、一般的な受験の時期が1-3月でスギ花粉の時期に重なるため、受験期に花粉症の症状や抗アレルギー剤の副作用で集中力がそがれてしまうのを防ぐために始める方もいます。
よくある質問
① 抗アレルギー剤と一緒に飲んでも良いでしょうか?
→可能です。抗アレルギー剤を併用することで舌下免疫療法の効果が下がるわけではありません。副反応を抑えるためにも服用初期には併用することが多いです。
① 保険はききますか?
→保険がききます。治療効果のデータも蓄積されているので保険診療の対象です。
① ダニの舌下免疫療法も同時に行うことはできますか?
→可能です。
ただダニの舌下免疫療法を始めることはできますが、同時に開始するとアレルゲンの量が多くアレルギー反応が出やすくなるため、1剤目の症状が安定してから2剤目を開始する必要があります。最低でも1か月以上は空けることが望ましいです。
① いつ服用したらいいですか?
→始めたばかりの頃はアレルギー反応が起きた時に医療機関へ相談しやすい日中に服用することをお薦めします。
服用前後2時間以内に激しい運動、入浴、飲酒をするとアレルギー症状が出やすくなるため避けてください。また服用後5分間はうがいや飲食は避けてください。
起床時の歯磨きする前後や副反応が全くでなければ就眠時、通学・出勤前でも良いかもしれません。忘れないように内服する時間帯は決めた方が良いでしょう。
(5)花粉症が治ったかどうかどうやって判断するのですか?
→自覚症状で判断します。特異的IgEを下げる治療ではないので、血液検査で判断するわけではありません。
今回はスギの舌下免疫療法をご紹介しました。
ある程度の期間行う必要がありますが、花粉症を治す画期的な治療であることには変わりないので、一度検討してみてはいかがでしょうか?