花粉症対策~少しでも症状を軽くするために自分でできること~
今年もスギ花粉症のシーズンがやってきました。
寒波が遠ざかり少しずつ暖かくなると、鼻がムズムズ、目がかゆい、花粉症の方にとっては憂鬱な時期がやってきます。
いわずとしれた花粉症ですが、近年では国民の4人に1人が花粉症を患っていると言われています。
今回は自分でできる花粉症の対策について書いていきます。
目次
飛び始める時期・スギ花粉の量
東京ではスギ花粉は2月中旬から飛び始めることが多く、例年2月14日のバレンタインデー前後から飛び始めます。
早い方は1月過ぎから少しずつ鼻炎症状が出る方もいらっしゃいます。
スギ花粉の量は前年の初夏(6月頃)から秋にかけての気温に左右されます。
この時期の気温が高く、日照時間が長いほど、スギの雄花はよく育ち花粉の量が多くなります。
11月には雄花は完成し、気温が寒くなることにより活動を休止させ休眠状態になりますが、一定期間休眠にさらされていることで目覚め、気温が暖かくなるについて花粉を飛ばします。
2022年は昨年よりも花粉の量はやや多く、例年並みと言われています。
日本気象協会の花粉情報が参考になります。
日本気象協会花粉飛散情報 https://tenki.jp/pollen/
自分でできる花粉症対策
花粉症予防の鉄則は「吸わない、付けない、持ち込まない」です。
症状の強い方は薬のみでは抑えきれないこともあり、普段の対策はとても大切です。
花粉症の時期でも、1日中家から一歩も外へ出ず、だれも家の出入りがなく、窓も締め切っていれば症状はほとんど出ません。
しかしそういう生活は現実的に難しいので一つでも多く対策を立てていきましょう。
花粉を吸わない
①マスク
コロナ渦前は花粉症の症状があってもうっかりマスクをつけ忘れる方、症状がひどくならないと花粉が飛んでいる時期でもマスクをつけないで外出する方がいたと思いますが、コロナ渦になりマスクをつけて外出することが当たり前となった今、「花粉を吸わない」対策が自然に出来ていると思います。
マスクをつけることで、花粉を吸い込む量は1/3~1/6に減らす効果があると言われています。
大事なことは自分の顔のサイズにあったものをぴったりとつけることです。
マスクをつけることはが当たり前になりましたが、色々なマスクの種類があり布やウレタンなど今まであまり普及していなかったものを使用されている方も多いです。
ウイルスに対しても同様ですが、不織布マスクの方が花粉を防御できるので不織布マスクをお薦めします。
(医療従事者が仕事中に布やウレタンのマスクをつけていることってほぼないですよね)
②外出を避ける
花粉が特に多い日は、外出を避けるか行き先を考えましょう。
3月頃の一番花粉が飛んでいる時期に「昨日一日中外にいたら、それから鼻水と鼻づまりがひどくて、薬を飲んでも全く効きません!」と駆け込んで来られる方が結構いらっしゃいます。「子供と一日公園に・・・」とプランを立てる前に、行った後に鼻炎が悪化することまで想像してみてください。
「花粉が特に多い日」とは
・晴れて、気温が高い日
・空気が乾燥して、風が強い日
・雨上がりの翌日や気温が高い日が2~3日続いた後
です。天気予報や携帯アプリを活用すると確実です。
「屋内はコロナ、屋外は花粉・・・」とお出かけが難しい時期ですので、自宅でできる楽しみを見つけれられるとよいですね。
花粉をつけない
①メガネ
目の表面に花粉が付着すると、目のかゆみ、充血を引き起こします。
いわゆるアレルギー性結膜炎です。
花粉を目につけないためにメガネが有効です。
通常のメガネでも、使用しない場合と比べて目に入る花粉の量は40%減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネではおおよそ65%減少すると言われています。
花粉飛散期にコンタクトレンズを使用すると、コンタクトレンズによる刺激が花粉によるアレルギー性結膜炎を悪化させる可能性があるため、メガネに替えた方がよいとされています。
どうしてもコンタクトレンズをつける必要があれば、上から花粉用メガネをつけたり、大きめのサングラスをかけたりするのはいかがでしょうか?
新型コロナウイルスも目からも感染するため、感染予防のためにも花粉症用のメガネは有効です。当院のスタッフも業務中はフェイスシールドまたは花粉症用のメガネを装着して防護しています。
②手洗い・うがい・洗顔
体に付着した花粉を落とすことも効果的です。
いくら薬で症状を抑えても、鼻や目に花粉が付いたままではなかなか症状は取れません。
手洗い・うがいはウイルス対策でよくされると思いますが、目がかゆい時などは洗顔して目の周りの花粉を落とすとよいでしょう。外出先では、涙の成分に近い点眼液で花粉を洗い流してもよいと思います。
鼻の粘膜についた花粉は、生理食塩水で鼻うがいをすることで流す方法もあります。冷たい水や水道水で行うと刺激になって鼻炎が悪化することがあるので気をつけましょう。
③保湿
皮膚からも花粉などの抗原が体に侵入してアレルギーを成立させると言われています。
乾燥肌で肌のバリアが弱まっていると、花粉が体の中に侵入しやすくなるので、保湿して皮膚の状態を整えておくことが花粉症を悪化させない上で重要です。
保湿は入浴後が効果的です。保湿に関しては花粉飛散期に行うというより、普段から行いよい皮膚の状態を保つように心がけましょう。
花粉をもちこまない
①服装
一般的にウール製の衣服は木綿や化繊と比較し花粉が付着しやすいため、特に一番外側に着る上着はウール素材の衣服は避け、ツルツルした素材のものにした方が望ましいです。
家に入る前や玄関周囲で花粉をはらい、上着はリビングなどに持ち込まない方がよいでしょう。
②来ていた服を着替える・帰ってきたらまずシャワー
花粉を部屋に持ち込まないという観点から、帰って来てまずシャワーを浴びて着替えることができれば安心です。
花粉は髪や顔など体中についているので、全身を洗い流し、花粉を部屋にまき散らさないことが重要です。
帰宅後は何かと忙しいと思いますが、花粉をたくさん浴びた日だけでもやってみてはいかがでしょう。
③部屋干し
せっかく洗濯しても、外に干して花粉を付けたら台無しです。
サーキュレーターなど活用しながら部屋干しにしましょう。
症状がでるなら早めに治療を
花粉症の薬の種類はたくさんあります。
最近は薬局でも販売されるようになり、服用しやすくなりました。
しかし「市販の血管収縮剤の入った鼻スプレーだけをひどいときのみ使用している」といったアレルギー性鼻炎の治療のガイドラインから離れた「その場しのぎ」の使い方をされている方も多く見かけます。
そのような使い方では、改善しないだけでなく薬剤性鼻炎となり余計に症状が悪化することがあります。
可能であれば、耳鼻咽喉科を受診して薬の相談をして頂いた方が良いと思います。
特にコロナ渦では、花粉症の症状と新型コロナウイルス感染症の症状がよく似ているため、症状だけでは判断が難しいです。
「花粉症だと思っていた鼻水、くしゃみが実は新型コロナウイルスによるものだった」ということもあります。
くしゃみ1回で発生する飛沫の量は咳の10倍以上。花粉症の症状にウイルスの感染が加わると、周囲への感染を広げてしまう危険性があります。
花粉症の方は目や鼻のかゆみが出るため、ウイルスのついた手で目や鼻をこすると、粘膜を介してウイルス感染するリスクも高まります。
耳鼻科で一番会員数の多い学会である「日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会」でも、新型コロナウイルスが流行しているシーズンは症状が出る前から花粉症の治療を始めることが推奨されています。
日本耳鼻咽喉科学会公式チャンネルでコロナ渦での花粉症対策について分かりやすい動画が作成されているので、チェックしてみてください。
アレルギー性鼻炎の治療は内服薬と点鼻薬が主です。下甲介粘膜焼灼術(CO2レーザー)もありますが、現状はコロナ対策のため当院では導入しておりません。根本的に治したい場合は後ほど紹介する舌下免疫療法がおすすめです。
1, 内服薬
主に抗ヒスタミン剤を使用します。
・眠気の出やすさ
・1日何回飲む必要があるか
・食前か食後か
・増量できるか
・何歳から服用可能か
などそれぞれに特徴があります。
他にも抗ロイコトリエン薬、副腎皮質ステロイド薬、漢方薬なども用います。
①第二世代抗ヒスタミン薬
第二世代抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎の第一選択薬です。薬の種類が多く、効き目や眠気の出やすさ、用法(1日1回か1日2回か、食前か食後か)などそれぞれの薬剤に特徴がありいずれも即効性があります。
②抗ロイコトリエン薬
鼻閉が強い場合は抗ロイコトリエン薬が効果的です。連用することで効果が出てきます。
眠気はありません。
③副腎皮質ステロイド薬
上記薬剤でコントロール不良な場合、最重症の場合には短期間に限り使用することもあります。ステロイド薬は血清コルチゾール低下や血糖値の上昇など副作用が多いため、メリットが上回る場合以外は連用は避けた方が良いでしょう。
④漢方薬
アレルギー性鼻炎に対しては小青竜湯が効果的です。漢方薬は連続使用しないと効果がでないと考えられがちですが、小青竜湯は即効性のある薬です。プラセボとの比較対象試験も行われており、有効性が証明されています。
2, 点鼻薬
主に鼻噴霧用ステロイド薬を使用します。ミストタイプやパウダータイプがあります。
①鼻噴霧用ステロイド薬
点鼻薬では主に鼻噴霧用ステロイド薬を用います。ステロイドは一般的に連用することで副作用を来すものが多いですが、鼻噴霧用ステロイドは局所への効果が強く、吸収されにくく、さらに吸収されてもすぐに分解されるため、一部の製品を除き1年以上連用しても全身的な副作用は少なく、効果は確実です。効果は1~2日でみられますが、長期連用により効果が上がります。
③点鼻用血管収縮薬
アレルギー性鼻炎の鼻閉に対して使用されることがあります。アレルギー性鼻炎の鼻閉は鼻粘膜のうっ血、浮腫、結合織増生などによりおこります。点鼻用血管収縮薬はうっ血に効果的で即効性があります。しかし連続使用により効果の持続は短くなり、逆に血管が拡張してかえって腫脹し、さらに使用回数が増えるという悪循環に陥ります(薬物性鼻炎)。そのため使用は短期間に限定する必要があります。
3, 下甲介粘膜焼灼術(CO2レーザー)
(※現在、新型コロナ感染予防のため当院では行っておりません。)
アレルギー性鼻炎で鼻閉を来す際には下甲介粘膜という鼻内の粘膜が腫脹しています。その部位をCO2レーザーで蒸散させることにより、物理的に開放するスペースが増え鼻閉が改善します。粘膜は再生するため、効果には個人差がありますが数年で元の状態に戻ります。
根本的に解決したい場合は?
上記の治療は、花粉症の症状を抑える薬になります。
薬の内服をやめると症状がでるため、症状が続く際は飲み続ける必要があります。
「根本的に花粉症を改善させたい」という方は、「舌下免疫療法」という選択肢があります。
アレルギーの原因であるアレルゲンを少量毎日服用することで花粉に対して過敏に体が反応しないようにする治療です。
ただし花粉症の場合はスギ花粉に限ります。
ヒノキや秋の花粉であるブタクサ、ヨモギなどには効果がありません。
また、体質を変える治療のため症状がある時期のみではなく、一度始めたら毎日内服する必要があります。
・抗ヒスタミン薬、点鼻薬で症状を抑えきれない方
・屋外で仕事をする方
・ランニング、サッカー、野球など屋外でスポーツをする方
・根本的に花粉症の治療に取り組みたい方
など、舌下免疫療法を考えてみてはいかがでしょうか?
下記リンクから舌下免疫療法のページもご覧ください。
⇓
【スギ花粉の舌下免疫療法】いつからはじめる?費用は?何歳から?【シダキュア・アレルゲン免疫療法】
最後に
いかがだったでしょうか。
花粉症予防対策は、実はコロナ感染対策とリンクする部分がとても多いと思います。
しっかり予防して、花粉もコロナも寄せ付けないようにしましょう。
参考サイト
花粉症環境保健マニュアル2019
https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/2019_full.pdf
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 新型コロナウイルス感染症流行中の花粉症対策について
http://www.jibika.or.jp/citizens/covid19/kafunsho_210209.htm