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【定量検査】新型コロナウイルス抗体検査~ワクチン接種後の「中和抗体」が数値で出ます~

[2021.09.03]

みなさんは新型コロナウイルスのワクチンを打ちましたか?

「予約がなかなか取れずに苦労したよ」

「2回目の後はとても体がつらかった。あんなに大変だったんだから抗体ついてないなんて事はないよなあ」

「あの時調子悪かったのは実はコロナに感染していたんじゃないかなあ?」

なんていう方もいらっしゃると思います。

また逆にワクチンを接種したのにあまり副反応がなかった方は

「本当にワクチンの効果はあるのかな?」

と感じているかもしれません。

 

ワクチンを接種することで産生される「中和抗体」の値は個人差が大きく、ワクチンを接種した方、または新型コロナウイルスにかかったことのある方も、自分がどのくらいの抗体を持っているかは気になるところではないでしょうか?

 

今回のコラムで紹介するのは、新型コロナウイルス抗体検査です。最近は各自治体や大学病院でも大規模調査が行われ、「ワクチン接種後や感染後のsタンパクに対する中和抗体価」を測定する検査として知られるようになってきました。

 

当院で採用している検査は、そのような大規模調査で行われているものと同じ、結果が数値で出る【定量検査】で非常に精度の高いものです。

簡易キットを用いる【定性検査】のような陰性、陽性の判定だけではなく、数値として結果が出るため、1か月後、半年後、1年後などの時間経過の変化もみることができます。
そのため今後様々な施設で行われるであろう大規模調査と比較できるというメリットもあります。

 

今回のコラムの目次です。

≪目次≫

1, 検査の概要と大規模調査の結果

2, 検査の費用と方法

(5,500円税込 検査証明書郵送料含む)

3, 「抗体」検査と「抗原」検査は違います

4, 抗体検査の注意点

(以下はもっと詳しく知りたい方向けです)

5, 新型コロナウイルスワクチンの特徴とメッセンジャーRNA(mRNA)とは?

6, ワクチンを打つと体の中で何が起こるのか?

7, 中和抗体とは?

 

1, 検査の概要

当院で採用している検査は

SARS-CoV2 Total 抗体(ECLIA 法)

ロシュ・ダイアグノスティックス社製 「ElecsysⓇAnti-SARS-CoV-2 S RUO」

です。

検査の正確さは、「感度」と「特異度」の2つの指標で評価されますが、この検査は非常に正確性が高く

 

・感度 98.8%

・特異度 99.98%

つまり

抗体を持っている100人を検査した時に正しく陽性と判定される人が98.8人

抗体を持っていない100人を検査した時に正しく陰性と判定される人が99.98人

ということです。

またFDA(米国食品医薬品局)や欧州での使用を可能とするCEマークも取得しています。

 


基準値は

0.8U/ml未満で陰性

0.8U/ml以上で陽性

(15U/ml以上で十分な中和抗体あり)

(250U/ml以上で高力価)

 

となっています。評価が定まっていないためカッコは参考値とお考え下さい。

 

結果は、陰性・陽性の判定の他、抗体価を数値で報告します。

現状、抗体価が数値で出る検査試薬は、当院採用のロシュ社の他にアボット社もあります。どれにするかは各医療機関が決めているわけですが、以下のように千葉大学医学部付属病院や国立病院機構宇都宮病院などが日本最大規模で調査結果を発表しているので、自分の結果と比較できるという点でロシュ社の試薬が良いと考えています。

せっかく採血までするのであれば、+や-で出るだけの簡易キットは少し物足りないかもしれません。(あくまで個人的な意見と思って下さい)

 

「ワクチン接種3か月後」や「コロナ感染半年後」などの「検査を思い立った今」を検査できるのは、実は一生に一度しかチャンスがないのでどんな検査をするか、十分に検討されて良いと思います。

 

次に、抗体検査の大規模調査で日本人を対象に行われたものを紹介します。

 

1,千葉大学医学部付属病院では、ファイザー製ワクチンを2回接種した病院職員に対して、2~5週間後に抗体検査を行いました。

2回目接種後、抗体が陽性となったのは1,774名中1,773名(99.9%)

接種後の抗体価は、中央値(小さい順に並べた値のちょうど真ん中にある値のこと)は2,060 U/mLと大幅に上昇しています。(図1)

 

千葉大学医学部附属病院ニュースリリースより引用

図1

 

興味深い結果として、抗体価の上がり方に影響する要素があるかもしれません。(図2)

①抗体価が上がりやすいのは、

・新型コロナに感染歴がある

・女性

・1回目と2回目の接種間隔が18~25日

・(花粉症薬などの)抗アレルギー薬を内服している

 

②抗体価が上がりにくいのは

・免疫抑制薬を内服している

・高齢

・ステロイド薬を内服している

・よく飲酒をしている

 

図2

 

2,和歌山県福祉保健部でも、医療従事者474名に対してファイザー製ワクチンを2回接種3~4週間後に抗体検査を行っています。(図3、図4)

2回の接種後は全員抗体陽性

98%(464人)は高力価(250U/ml以上)

残りの2%(10人)も中和抗体陽性となる15U/mlは超えていました。

全年齢で高力価の方がほとんどでしたが、60代でやや低い傾向があります。千葉大学の調査でも高齢者は抗体価が上がりにくい傾向がありました。

 

図3

 

図4

 

3,国立病院機構宇都宮病院の医療従事者378名を対象に、ファイザー製ワクチン2回接種3ヵ月後の抗体価を調査しました。

この調査でも当院で採用しているロシュ・ダイアグノスティックス社製の検査試薬を用いています。結果は以下の通りです。

・全年齢の中央値は764U/ml

・20歳台の中央値は約1000 U/mLに対し、60-70歳台は約500 U/mLと半分でした。

表では男女差があるように見えますが、男女の喫煙歴の差が影響しており統計学的には男女差はありません。ここは千葉大学の結果と異なっています。

・喫煙歴なし: 919U/ml 喫煙歴あり: 528U/ml

喫煙歴があると抗体価が約400U/ml低いという結果でした。

 

 

 

 

4,横浜市立大学の研究グループが、新型コロナウイルスに感染した約250例に対して、6か月後と1年後の中和抗体価を調査しています。

残念ながら使用しているのは東ソー社のAIA®-CL という検査試薬で、現状一般的なクリニックでは検査するのが難しいものです。ただ研究規模としては日本最大級で以下のような結果が出ています。

・抗ウイルス抗体、中和抗体のいずれにおいても時間経過で減少傾向にある。

・回復者の多くが、約1年後も検出可能な量の抗ウイルス抗体および中和抗体を保有している。

・変異株に対する中和抗体保有割合は、従来株に比べて低下する傾向がある。

 

 

2, 検査費用と方法

費用 5,500円(税込、検査証明書郵送料含む)

保険適応外となるため自費診療となります。

 

方法

・通常診察と同様にwebから予約を取る方が良いと思います。(直接来院されてもかまいません)

できれば予約サイトのメニューから「新型コロナ抗体検査」を選択してください。当日の受付でも大丈夫です。

・診察と採血をします。

・結果はおおむね1週間後に郵送でお送りします。

・採血が可能な5歳以上(ある程度大人しくできる)が対象です。

 

初めての方は下記のページをご覧になってください。

初めての方へ

 

 

3, 「抗体」検査と「抗原」検査とは違います

よく混同されるのが抗原検査ですが、抗原検査の場合は

「今、新型コロナウイルスに罹患しているかどうか」を調べるものでPCR検査と同じような意味を持ちます。

「抗原」というのは、今回の検査では新型コロナウイルスのことで、「抗体」というのは人が新型コロナウイルスに感染した後に、体が新型コロナウイルスと戦うために作る武器のようなものです。(詳細は後ほど説明します。)

 

 

4, 抗体検査の注意点

抗体検査は診断を目的として使用することは推奨されておりません

「コロナウイルスに、今罹患しているかどうか」はPCR検査や抗原検査で調べます。

 

一般的に抗体はウイルスに感染後2週間程度経過してから上昇し始めます。

そのため、検査2週間以内に下記のような新型コロナウイルスを疑うような症状がある方は院内の感染予防のため、また診断の正確性のために抗体検査はご遠慮ください。

 

・発熱

・咳

・呼吸苦

・倦怠感

・喉の痛み

・嗅覚障害、味覚障害

 

また抗体検査が陽性であっても新型コロナウイルスに罹患しないわけではありません

新型コロナウイルスに2回罹患する方もいれば、ワクチンを2回接種しても罹患(ブレイクスルー感染)する方もいます。

ただ、ワクチンを接種された方は罹患した際に重症化する可能性はかなり低くなると言われています。

抗体価についても、どのくらいの価なら発症を防げるか、など各医療機関で研究が進められています。今後蓄積されたデータから新たな指標が発表されると期待しています。

(次の5からはさらにワクチンや抗体について詳しく知りたい方向けです。)

 

 

5, 新型コロナウイルスワクチンの特徴とメッセンジャーRNA(mRNA)とは?

ファイザー社製とモデルナ製のワクチンは、メッセンジャーRNA(mRNA)型と呼ばれるワクチンです。

今まで私たちが接種してきたワクチンは、生ワクチン(病原体そのものを弱毒化したもの)や不活化ワクチン(感染力をなくした病原体)が使用されてきましたが、新型コロナウイルスのワクチンはたんぱく質の設計図であるmRNAを投与することで免疫をつけるワクチンです。

 

ちょっと難しい言葉ですが、mRNAとは全ての遺伝子情報がのっているDNAから、あるタンパク質をつくるのに必要な情報だけをコピーしたものです。

 

例えるなら、自動車を作る際に全ての部品の設計図(自動車のDNA)から、ハンドル(作りたいタンパク質)のページだけをコピーしてハンドルを作ったとします。

その時のコピーした紙がmRNAと言えます。(伝わるでしょうか?)

 

このmRNAはウイルスのsタンパク部分のコピーなので(図を参照)、ワクチンを打ってもコロナウイルスに感染することはありません。またmRNAはDNAがある細胞の核の中に入ることもありませんし、そもそも人間はmRNAからDNAに変換する機能(逆転写)を持っていないのでDNAに組み込まれることもありません。そのためワクチンを打つと遺伝子が書き換えられるということもありません。

 

藤田医科大学ホームページより引用

 

6, ワクチンを打つと体の中で何が起こるのか?

mRNA型のワクチンは、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)のmRNAが入っています。

接種により mRNA がヒトの細胞内に取り込まれると、この mRNAを基に細胞内でウイルスと同じようなスパイクタンパク質が作られ、さらに中和抗体が産生、細胞性免疫反応が起きることで、新型コロナウイルスによる感染、重症化予防ができるといわれています。

 

 

7, 中和抗体とは?

中和抗体の前に、そもそも「抗体」とは何でしょうか?

以前に院長コラム「子供(特に保育園児)の鼻水は治る?近年、アレルギー性鼻炎の低年齢化が進んでいるのが原因かも」でもお伝えしましたが、抗体とは免疫グロブリンというタンパク質の事です。

異物と認識したものに特異的にくっつくことで、その異物を排除しやすくする働きがあります。そして一度抗体を作ると次に同じ異物が来た時に、前に抗体で戦ったことを覚えていて、最初に戦った時よりも簡単に異物を倒すことができます。

これを獲得免疫と言い、予防接種はこの仕組みを応用しています。

 

また「中和」とは、ウイルスにくっついて細胞に侵入しないようにする働きですので、中和抗体はそのような働きをもつ抗体ということです。

 

この記事を読んで抗体検査について皆さんの疑問が少しでも解決できればいいなと思っています。

 

参考文献等

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症について

こびなび-COV-Navi

2021年6月3日 千葉大学医学部附属病院病院広報室 news releas

Antibody responses to BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccine in 2,015 healthcare workers in a single tertiary referral hospital in Japan (preprint )

2021年5月20日 新型コロナワクチン接種後の抗体について 和歌山県福祉保健部

2021年5月20日 横浜市立大学 新型コロナウイルス感染から約1年後における 抗ウイルス抗体および中和抗体の保有状況に関する調査

2021年5月20日 横浜市立大学学術院医学群 臨床統計学、微⽣物学、データサイエンス研究科研究グループ press releas

2021年8月10日プレスリリース.国立病院機構 宇都宮病院https://utsunomiya.hosp.go.jp/files/000159482.pdf

Age and smoking predict antibody titres at 3 months after the second dose of the BNT162b2 COVID-19 vaccine

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