【花粉食物アレルギー・PFAS】果物や野菜を食べて口や喉がかゆい、イガイガすることはありませんか?ハンノキアレルギー【口腔アレルギー症候群・OAS】
リンゴや桃、メロン、トマトなどの生の果物、野菜を食べた後、口やのどがかゆい、イガイガする、腫れなどの症状が起きることはありませんか?
そういう症状がある方は、もしかしたら「口腔アレルギー症候群・OAS」「花粉食物アレルギー・PFAS」かもしれません。
何らかの食物で口の中にアレルギー反応が起こることを「口腔アレルギー症候群 oral allergy syndrome;OAS 」といいます。
その中でも花粉症の方がその花粉と交差反応(似たような構造をもつ別のタンパク質に反応してしまうこと)を持つ果物や野菜を食べた時に、口やのどがイガイガする、かゆい、腫れたりしてアレルギーを起こすことを「花粉食物アレルギーpollen food allergy syndrome ; PFAS(ピーファス)」と呼びます。
目次
花粉食物アレルギー PFASの診断
診断はアレルギーの発生状況、特に花粉症の合併と疑われる食物の摂取状況を参考にして行います。補助診断としてprick-to-prick testを用いる場合もあります。確定診断のために行う経口負荷試験では、厳重な管理のもと疑われる食品を食べることも行います。(当院ではprick-to-prick testや経口負荷試験は行っておりません)
小学校入学後から増加し始め、成人女性に多く見られます。
花粉症にかかっている年数が長いほど、またその花粉に対する特異的IgE抗体価(血液検査によってわかります)が高いほど花粉食物アレルギーを合併することが多いと言われています。
花粉食物アレルギーの原因花粉と食物
花粉食物アレルギーは、生の果物や野菜を食べると起こりますが、多くの場合は自然に治ります。ただしハンノキやシラカンバの花粉アレルギー持つ方は豆乳によるアナフィラキシーショックを起こすことがあり注意が必要です。
ハンノキ、シラカンバ花粉症の20~40%程度にリンゴやモモなどのバラ科果物による花粉食物アレルギーが合併すると言われています。
ちなみに加熱調理されれば原因となるたんぱく質が分解されるため、例えば生のリンゴで症状がでる方でもジャムやアップルパイであれば食べても症状は出ないことが多いです。
主な花粉と関連する食物
①カバノキ科(ハンノキ、シラカンバ)
・バラ科(リンゴ、桃、サクランボ、梨、アンズ、アーモンド、ビワ、イチゴ、洋ナシ、スモモ)
・マメ科(大豆(特に豆乳)、ピーナッツ、緑豆もやし)
・マタタビ科(キウイフルーツ)
・カバノキ科(ヘーゼルナッツ)
・セリ科(セロリ、ニンジン)
・ナス科(じゃがいも、ししとうがらし)
②イネ科(オオアワガエリ、カモガヤ)
・ウリ科(メロン、スイカ)
・ナス科(トマト、ジャガイモ)
・マタタビ科(キウイフルーツ)
・ミカン科(オレンジ)
・マメ科(ピーナッツ)
③キク科(ブタクサ、ヨモギ)
・セリ科(セロリ、ニンジン、クミン、コリアンダー、フェンネル)
・ウルシ科(マンゴー、ピスタチオ)
カバノキ科(ハンノキ、シラカンバ)のPFAS
PFASの中でも割合の高いハンノキ、シラカンバについて詳しく書いていきます。
ハンノキ
春はスギ花粉、ヒノキ花粉による花粉症として皆さんもご存じだと思いますが、同時期にもう一つ花粉症を起こす花粉が飛散しているのをご存知でしょうか。
それがハンノキです。
ハンノキは1月下旬から6月下旬まで花粉を飛ばすと言われています
①ハンノキアレルギー
ハンノキ花粉にアレルギーを持っている方はスギ花粉同様、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみを訴えます。また鼻症状だけではく咳嗽や咽頭症状を呈することも多く、感冒、特に今の時期(2022年春)では新型コロナウイルス(特にオミクロン株)との見分けが困難です。
ブナ目の樹木花粉は、花粉間で共通抗原性が高いこと知られており、ハンノキ花粉でアレルギー反応が出る方はシラカンバ花粉など他のブナ目花粉に対しても同様にアレルギー反応を起こし症状を呈することが高いと言われています。
②ハンノキってなに?
ハンノキはブナ目カバノキ科に属する樹木です。
沼地を好み、池のある公園などに生息している背の高い大木です。
花粉は1月中旬から6月中旬までと比較的長い期間飛散します。特に2月下旬から3月中旬に飛散が増加します。
ハンノキの実はリースの材料として使われることが多く、実際の樹木よりも実の方が馴染みがあるかもしれません。
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③どこに生えているの?
ハンノキといってもピンと来ない方が多いでしょう。
私も写真でハンノキの画像を見ても、どこにありそうか思い当たる場所がありませんでした。
調べてみると、ハンノキは東京都で絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少な樹木で、保護活動の取り組みも行われていました。
ハンノキは湿地を好みますが、都内で湿地が減少していることが原因の一因のようです。
当院のある杉並区役所にハンノキの生育場所について問い合わせてみたところ、区が管理している公園には数えるほどしか生えていないということでした。やはり沼地を好み、大木になるため住宅地の中に点在するような小さめの公園に積極的に植える樹木ではないようです。
都立公園など池にある大きな公園にはあるかもしれないということでした。
それならば、と調べてみると吉祥寺にある井の頭恩賜公園でちょうどハンノキの保護活動がなされているところでした。ハンノキなどの湿地林が減少すると湿地に住む多様な生き物の居場所を失ってしまうそうです。
井の頭恩賜公園は以前からハンノキがまとまった数生育している貴重なエリアがありました。しかし2018年の台風で多くの木が倒れてしまい、東京都によるハンノキ林の再生作業が始まっているそうです。
井の頭恩賜公園に行ってみると、池のほとりにハンノキ保全エリアがありました。倒木後の切り株から新しい芽が生えていました。成長したハンノキは思っていた以上に背の高い木で近くでは写真に収まりきらないほどであり、良く見ると枝から垂れ下がる花がたくさんついていました。写真でみていたその垂れ下がる花は、頭上の空高いところにあり、注意して歩いていないと見逃してしまうかもしれません。
シラカンバ
同じブナ目カバノキ科に属する樹木にはシラカンバがあります。白い樹皮が美しい避暑地や寒い地方の樹木の印象がありますね。北海道で多く生育しており、北海道では春の代表的な花粉症の原因として知られています。
シラカンバの花粉飛散時期は4月~6月と短い時期に集中して飛散します。ただシラカンバアレルギーをお持ちの方はハンノキと同様様々な果物や野菜に対してPFASが起こる可能性があります。
今回は普段聞きなれないアレルギーである「口腔アレルギー症候群」、「花粉食物アレルギー」についてまとめてみました。
もし心当たりがあるなという方は医療機関にご相談されることをお勧めします。
参考文献・website
・一般社団法人 日本アレルギー学会 homepage
・花粉・食物アレルギー症候群の現状と展望 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO)38(2): 43-49, 2020
・花粉症患者にみられる食物アレルギー:花粉- 食物アレルギー症候群 口咽科2019;32(2):103~107
・allergyiinsider website
・樹木検索図鑑 homepage