【副鼻腔炎】【後鼻漏】喉に鼻水が垂れ込む・ほっぺたが痛い・頭痛もする【歯性上顎洞炎】
黄色い鼻水がでる、鼻をかんでも前から出ず、喉の奥からねばっとした鼻水が垂れる、ほっぺたが痛い、目と目の間が痛い、下を向くと痛みが強くなる。
このような症状があれば副鼻腔炎に罹患しているかもしれません。
目次
1.副鼻腔ってなに?
2.副鼻腔炎とは
3.特殊な副鼻腔炎
4.治療法
1.副鼻腔ってなに?
副鼻腔とは鼻腔の周りにある骨で囲まれた空洞の事をいいます。(下図)
具体的には、
・頬にある上顎洞
・目と目の間あたりにある篩骨洞
・眉毛からオデコにある前頭洞
・篩骨洞より奥の、頭のちょうど中心あたりにある蝶形骨洞(下図には表示なし)
の4つが左右それぞれにあります。
いずれも鼻腔とつながっています。
2.副鼻腔炎
副鼻腔炎は、副鼻腔内で炎症を起こした状態です。
主にウイルス感染や細菌感染が原因で炎症を起こし、副鼻腔内に膿などの液体が貯まったり、副鼻腔粘膜が腫れたりします。
発症から4週間以内のものを急性副鼻腔炎、発症から3か月以上経ったものを慢性副鼻腔炎といいます。
以前は副鼻腔炎のことを「蓄膿症」ともいいました。
症状
急性の場合は、風邪のような上気道感染が治りかけた時期に発症することが多いです。
「はじめは喉の痛み、発熱、さらさらな鼻水、咳だったけれど、喉の痛みや熱が治った後も、鼻水と痰がらみの咳だけがずっと続いてしまって。ちなみに鼻水は真っ黄色から緑色です。」
というようなエピソードが多いです。
副鼻腔と鼻腔がつながっている所は鼻の奥の方なので、副鼻腔からの膿や分泌物は鼻をかんでも出てこないことが多く、痰として喉に流れていく傾向があります。
また副鼻腔炎の患者さんが、診察時に鼻と目の間を指さしながら
「この辺が重くて、もわっとします。」と話をされることも良くあります。ひどくなると鼻と目の間・上の歯・目の奥などの痛みが出ます。
以下のような症状が複数当てはまれば副鼻腔炎の可能性があるので要注意です。
・アレルギー性鼻炎や風邪の後の持続する黄色~緑色の鼻汁
・鼻づまり
・目と目の間が重い感じ
・頬・オデコ・目の間・歯の痛み
・鼻の奥の悪臭
・匂いがしない
・鼻水がのどに垂れる(後鼻漏)
・痰や痰がらみの咳が続く
診断
診察では鼻吸引や必要に応じて鼻腔ファイバーを行います。膿性鼻汁が奥の方から認められれば、症状の経過と合わせて副鼻腔炎と診断することが出来ます。しかし、膿性鼻汁が常に副鼻腔から鼻腔や喉に流れているわけではないので、はっきりとした所見がないこともあります。
慢性的に副鼻腔炎の症状を認める場合は、顔面のCTを撮ると「実際に副鼻腔炎になっているかどうか」や「どの程度ひどいか」が分かります。
副鼻腔は骨で囲まれているので、中の状態を知るにはCTなどの画像検査をしないと分かりません。
簡易的にレントゲン撮影をすることもありますが、細かい部分はCTでないと評価できません。ただしCTは放射線を被爆するので急性副鼻腔炎の度に撮ることは推奨されませんし、子供の場合は余程治療に難渋していなければ撮影しないのが一般的です。
当院にはレントゲンやCTの設備はないので、撮影が必要な場合はCTを専門に撮る医療機関へご紹介し、結果を当院で説明する方法をとっています。
3.特殊な副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎の場合、最も頻度が高いのは細菌性です。
細菌性の場合は抗生剤での治療が一般的です。
抗生剤が効かず、鼻腔ポリープ・嗅覚障害・喘息の既往がある方は「好酸球性副鼻腔炎」といって、難治性の副鼻腔炎である可能性があります。好酸球性副鼻腔炎は抗生剤ではなくステロイド剤で治療しますが、ステロイドは全身への副作用も強くずっと飲み続けることができません。
手術して鼻腔ポリープや副鼻腔の腫脹している粘膜を削っても、風邪などをきっかけに再発することもあり、治療に難渋する副鼻腔炎です。
また「片側だけの慢性副鼻腔炎」も注意が必要です。
「歯性上顎洞炎」といって、歯が原因で副鼻腔炎になることもあります。
副鼻腔の中でも歯に近い上顎洞に炎症を起こします。
「虫歯をこじらせて以前歯の神経の治療をした」など過去に根幹治療を行った方にみられることが多いです。他にも抜歯した際に上顎洞と口腔内が交通したり、虫歯がひどい場合に起きたりすることがあります。
歯性上顎洞炎は、診療ガイドラインがないので治療法が定まっていません(2023年現在)。
また耳鼻咽喉科と歯科と両方に関連する病気なので、耳鼻咽喉科と歯科の両方の側面から治療する必要がありますが、ガイドラインがないので各病院、各医師によって方針が異なることがあります。
症状は細菌性副鼻腔炎とほとんど同じなので、まずは抗生剤治療を行うことが多いです。抗生剤が効かず歯科治療も困難な場合に抜歯するのか、耳鼻科の副鼻腔手術に進むのか、その時の患者さんの症状や医療機関によって方針が異なります。良く主治医と相談してください。
4.治療法
・急性副鼻腔炎であれば、適切な抗生剤を5~10日程度使用するとおおむね改善しますが、稀に使用した抗生剤に耐性菌になっていることがあり抗生剤を変更しないと改善しないこともあります。
多種類の細菌に効果がある抗生剤を初めから使用しているとその抗生剤に耐性をもつ菌になってしまう恐れがあるので、第一選択薬はペニシリン系の抗生剤が推奨されています。
・慢性副鼻腔炎(細菌性)であれば、マクロライド少量長期投与療法を行います。
マクロライドは抗生剤の一種で、通常使用量の半量で治療することで気道の粘液分泌物を抑制します。
またサイトカインの産生を抑制し気道の炎症を改善、細菌の菌体外毒素や酵素の産生を抑制して細菌のバイオフィルムの形成を抑えます。要は抗菌作用ではなく抗炎症作用や免疫に作用することで慢性副鼻腔炎を改善します。
マクロライドの少量長期投与療法を3か月以上行っても著明な改善を認めない場合は手術を検討します。
手術は全身麻酔で行われるのが一般的です。以前は歯茎から直接切開して手術していましたが現在は内視鏡を使用します。内視鏡を鼻内に挿入し手術するため、顔に傷がつくことはありません。
副鼻腔炎の手術は、副鼻腔と鼻腔の間の骨を取り除き、腫れている粘膜や膿を除去して、鼻腔と副鼻腔を一つの空洞にするのが目的です。鼻中隔弯曲症、鼻腔ポリープのある方や鼻腔粘膜が腫れている状態の方は、同時に鼻閉を改善させる手術を行うこともあります。
最近は日帰り手術や短期手術を行う病院もありますが、術後の経過をみたり、創部の処置を行ったりするために数日入院する病院が多いと思います。
今回のコラムは如何だったでしょうか?
副鼻腔炎は比較的罹患しやすい病気なので、病気のイメージを持っておくといざというときに早めに対処できるのではないかと思います。
参考図書・サイト
急性副鼻腔炎ガイドライン
難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)