イヤホンが原因の「外耳炎」~耳がかゆい・痛い・腫れる・耳だれ・耳閉感~【こんな症状はありませんか?】
コロナ渦の中、働き方が大きく変わりリモートワークをされる方が多くなりました。
オンライン会議でイヤホンが欠かせないという方もいらっしゃると思います。
街中でも通勤時やランニング中にイヤホンを使用する方をよく見かけます。
そんな中、最近「イヤホンによる外耳炎」になる方が非常に増えています。
今回は外耳炎についてお話していきます。
外耳炎とは
「外耳」とは耳の入り口から鼓膜までの部分、いわゆる「耳かきするときに触れるところ」をさします。
その外耳の皮膚に何かしらの物理的な刺激が加わり、炎症を起こした状態を外耳炎と言います。
基本的には、耳そうじのやり過ぎ、指の爪でひっかく、耳栓、イヤホンなどの外的要因がもとで炎症を起こして発症します。
感染を起こす原因菌はじくじくとした湿潤環境を好むため高温多湿の夏に増える傾向があります。
特にイヤホンで外耳炎になる方は、装用による小さな傷から感染したり、長時間イヤホンをつけたりすることで外耳道が高温多湿になり菌が繁殖しやすくなることが関係します。
症状
外耳炎になると、耳の痛み、かゆみ、耳漏(耳から液体がでる状態)などが生じます。特に外耳道の腫れが強いと、耳のつまり感や聞こえづらさを自覚したり、顎を動かしたりするだけで激痛が生じることもあります。
イヤホンで外耳炎になる方は外耳道の入り口付近のみ皮膚がボロボロ脱落したり、膿瘍を作ったりする患者さんもいます。
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原因菌~細菌性と真菌性~
外耳炎の原因菌は、細菌性と真菌性があります。
細菌性の方が一般的ですが、繰り返し罹患している方や外耳炎が治りづらい場合は真菌性、つまり耳の中にカビが生えていることもあります。
治療
細菌性でも真菌性でも外耳道がじくじくして汚れている場合は耳の中を洗浄し、汚れを丁寧に吸引します。
細菌性の場合は、抗生剤での治療が一般的です。
抗生剤も内服薬、軟膏、点耳薬を状態によって使い分けます。
細菌の中でも抗生剤が効かない耐性菌が原因の場合は、抗生剤ではなく頻回に耳の処置を行い治療します。
そのため耳漏が多く炎症の程度強い方は、抗生剤使用前に菌の検査(培養検査)を行い、どのような菌が原因なのか、耐性菌ではないかを確かめます。
培養検査は、専用の綿棒で外耳道をこすり検査会社へ提出します。
どのような菌がいて、どの抗生剤に感受性(効果)があるか、耐性があるかを調べることができます。
菌が生えてくるまでに時間を要することがあり、検査結果は1~2週間程度かかります。
ただし外耳道が乾いている場合は培養検査をしても原因菌が突き止められないことがあります。
真菌性の場合は、抗生剤は効きません。抗真菌薬の軟膏を塗布します。
細菌性のように内服薬や点耳薬を使用することは一般的ではなく、軟膏を丁寧に患部に塗る必要があり通院での処置をお薦めします。また真菌は難治性のことが多く、細菌性よりもこまめに長い期間、処置をする必要があります。
外耳炎にならないために ~骨伝導イヤホンがおすすめ~
基本的には耳の中を触らなければ外耳炎になる可能性は低いです。
「外耳炎になりやすいのであれば、イヤホンはしないで下さい」
いままでは、イヤホンは通勤通学中に音楽や動画を楽しむためや、ランニング中に使用することが主だったので、上記のように言えばよい話でした。
しかし最近は仕事で使用するケースが増えており
「リモートワークで一日中つける必要がある」
「イヤホンがないと仕事にならない」
「仕事でインカムを使うので」
といった声をよく聞きます。
イヤホンの代用としては
・スピーカー
・ヘッドホン
・骨伝導イヤホン
が挙げられます。
スピーカーであれば、耳に何も入れることなく声が聞こえるので外耳炎にはなりませんが、個室で他の方がいない状況でないとなかなか仕事しづらく条件が限られます。
ヘッドホンは周囲の音を気にすることなく、会話に集中することができますが、見た目がやや派手で、長時間連用すると耳の中が蒸れて外耳炎を引き起こす可能性があります。
個人的には外耳炎を起こしやすい方は、骨伝導イヤホンが良いのではないかと思います。
骨伝導イヤホンとは
音は空気の振動からなっており、その空気が外耳道に入り鼓膜を振動させ、鼓膜に付着する耳小骨に振動が伝わり、内耳で振動が電気信号に変換され脳へと伝わっていきます。
通常のイヤホンは、外耳道にはめ込み空気を振動させて、音を聞きます。
骨伝導イヤホンは、耳の近くの骨を振動させて直接内耳まで振動を伝え、音を聞きます。
骨伝導イヤホンは外耳道を塞ぐ必要がないため、外耳道に傷がつく心配や蒸れる心配はありません。
骨伝導イヤホンにも色々な形状があり、クリップのように耳たぶにひっかけるタイプや耳介軟骨に振動端子を当てるものがあります。
その中でも耳の負担が少なく安定しているという点では、ネックバンドタイプがよいのではないかと思います。
実際に骨伝導イヤホンを見に、
先日、吉祥寺の大型家電量販店へ行ってみました。
3階へ行くと、フロアの3分の1程度をイヤホンコーナーが占めており、イヤホンの需要の高さを反映していると思いました。
数々のイヤホンがずらっと並んでいます。
骨伝導イヤホンコーナーもありました。
ネックバンドタイプも数種類あり、実際に装用して試聴することもできました。
振動端子が震えて少しくすぐったい感じもありますが、思っていた以上に音がよく聞こえ、周りの音も同時に聞くこともできて、とてもおもしろい感覚でした。
医師として当然「骨を振動させて音を聞くことが出来る」ということは理解していますが、実際に骨伝導で音を聞くと人間の構造の奥深さに感慨深いものがあります。
もともと、運動時につけることを主眼に置いているのか、広告の写真はランニングをしているモデルさんが多かったです。
骨伝導イヤホンにマイクがついている型もあり、リモートワークにも向いているのではないかと思いました。
これであれば、外耳炎を引き起こす可能性も減るかと思います。
今回のコラムはいかがだったでしょうか?
外耳炎になりやすい方は骨伝導イヤホンを一度試してみると良いと思います。
※追記(2022年7月20日)
骨伝導イヤホンは外耳道を塞がないため、外耳炎になりづらく、周囲の音も聞こえるので話しかけられた声や後ろからくる車の音などにも気づける、という利点があります。
その一方で、周りからの雑音がそのまま聞こえるのでイヤホンからの音が周囲の音にかき消されやすくなります。また、音を大きくすると音漏れも発生します。
通勤・通学などで電車の中で音楽を聴く場合は、周りの雑音に音楽の音がかき消されてしまうので、ついついボリュームを上げがちです。
骨伝導イヤホンは音の振動が鼓膜を介さずにダイレクトに内耳に伝わるので、大きすぎる音を聞くと騒音性難聴になる可能性があります。
骨伝導イヤホンを使う際には音のボリュームを上げすぎていないか気を付けましょう。静かなところでうるさいと思わない程度のボリュームがどのくらいか確かめてみてください。
個人的には、骨伝導イヤホンはラインニング中や比較的静かなところで集中して動画を見たい時、子供達が騒いでいる時に気分転換に音楽を聴きたいとき(子供に話しかけられても気づけるので)にお薦めです。
また、骨伝導イヤホンは比較的高価ですが、耳を塞がないタイプの骨伝導ではないイヤホンもあるのでそちらを試しても良いかもしれません。