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【加齢性難聴・補聴器】最近、耳の聞こえに不安を感じることはありませんか?認知症の予防に70歳を過ぎたら一度聴力検査を

[2021.03.31]
最近、耳の聞こえが悪いなぁ。
補聴器ってつけた方が良いのかなぁ。

最近、耳の聞こえが悪いと感じることはありませんか?

「大勢で話しているときに、声は聞こえるけれど何を言っているか聞き取れない」
「相手との会話で聞き返すことが増えてきた」
「もごもご話す人の声が全く聞き取れなかった」
「一緒に暮らす旦那さん(奥さん)、高齢のお父さん(お母さん)に話しかけても聞こえていないようだ」
「テレビの音量がとても大きい」

などがあれば、一度耳鼻咽喉科での診察、聴力検査をお勧めします。

 


≪目次≫

  1. 聴力の衰えは30代から始まっています。
    ~聞こえますか?モスキート音~
  2. あなたの聴力はいくつですか?
    ~まずは自分の聴力を知りましょう~
  3. 年齢別の平均聴力
  4. 補聴器と集音器の違い
  5. 補聴器はいつからつけたらいいの?
  6. 検討したら早めに行動を
  7. 聞こえが悪くなると認知症が進行する!?
  8. 聴力の老化以外にも、意外な難聴の原因
    ~前から聞こえは悪かったけれど、最近特に聞こえないみたい~
  9. 補聴器が必要になるということは、体が元気な証拠
    ~前向きで、積極的な方ほど、補聴器を使用されています~

 

聴力の衰えは30代から始まっています
~聞こえますか?モスキート音~

聴力の老化は30代から始まると言われています。
「そんなことないでしょ。私は耳が良い方よ。小さな物音にもすぐに気が付くし。」
と思われる方も多いと思います。

私も実際そう思っていました。
しかし、モスキート音という17,000Hz前後の高周波の音を聞くと自分の耳の老化を実感することができます。

私自身20代前半の頃は、モスキート音が数メートル離れていた所からでもよく聞こえました。周りの年齢が上の先生や看護師さんが聞こえないと騒いでいるのを聞いて、なんでこんなにうるさい音が聞こえないのだろうと不思議に思ったのを覚えています。

ですが、最近モスキート音を久しぶりに聞いたところ全く聞こえなくなっていました。
機械が壊れているのかと思いましたが、子供たちに聞かせると確かに鳴っているようなので、自分の耳の老化に驚きました。

モスキート音はインターネットや専用アプリをインストールすると聞くことが出来るので一度体験して頂くと面白いと思います。

このように30代を過ぎると少しずつ高い音から聞こえなくなっていくのです。
気づかない間に少しずつ聞こえる範囲が狭まっていくというのは怖いことですよね。

 

あなたの聴力はいくつですか?と言われて答えられますか?
~まずは自分の聴力を知りましょう~

多くの人が、自分の視力がどのくらいかは知っているのに対して、自分の聴力はどのくらいか答えられる人はほとんどいません。
健康診断でも、聴力検査は「右と左の1,000Hzと4,000Hzが聞こえるかどうか」でチェックしているので、「右の高い音が悪いと言われています」などの大まかな認識になりがちです。

耳鼻咽喉科での聴力検査は125Hzから8,000Hzまでの7周波数を検査しています。
125Hzが一番低い音、8,000Hzが一番高い音です。
健康診断で異常を指摘されない方でも、低音の聞こえが悪い方、8,000Hzのみ低下している方もいらっしゃいます。

こちらが聴力検査のグラフです。



横軸が音の高さを表す周波数(Hz:ヘルツ)
縦軸が音の大きさを表す聴力レベル(dB:デシベル)を示しています。
右耳が〇、左耳が×
カギカッコ[ ]は骨導の聴力を示しています。

聴力の平均値は4分法といって500Hz、1,000Hz、2,000Hzから算出されますが、低音域や高音域に難聴がある方は、その周波数が加味されません。

聴力は周波数によって数値が異なるので、私の聞こえは○○です。と言いづらい面があり、どのような形のグラフになるかを知る必要があります。

 

年齢別の平均聴力

年齢別の平均聴力のグラフです。

(日本人聴力の加齢変化の研究 立木、笹森ら;Audiology Japan45,241-250,2002)

高い音から徐々に悪くなっていきます。
0dBは20代の平均聴力で、正常聴力は25dB以下です。
もともとは周波数によらず水平な形のグラフになりますが、50歳くらいから少しずつ8,000Hzが低下していく傾向があります。(30代から聴力は低下しますが、聴力検査のグラフ上に現れるのは50代からとなります。)

8,000Hz単独の音は日常生活にあまりないので、生活での不便はほとんどありませんが、難聴が進行していくと、タイマーや体温計のような電子音が聞き取りづらくなり、高い周波数で構成される子音(特にサ行、タ行)の聞き間違えが増えます。例えば、佐藤さんと加藤さん、1時(イチ)と7時(シチ)を聞き間違えやすくなります。

高い音に引きずられるように少しずつ全体的な聴力が低下していき、70歳付近で軽度難聴(26~40dB)を示す方が増えていきます。

会話に重要とされる周波数は1,000Hz周辺です。
1,000Hz周囲が低下してきて初めて、「最近聞こえが悪いかもしれない」と感じるようになります。
しかし、少しずつ聴力が低下するため軽度難聴では、「ちょっと聞き取りづらいこともあるけれど、日常生活に支障はないから大丈夫」と感じていらっしゃる方が多いように思います。
特に日本語は他の言語と比べて比較的低い周波数で構成されており、少しくらい高音が聞こえなくても会話できてしまいます。
そのため、海外に比べて日本は補聴器を使用している方の割合が低いと言われています。

平均聴力が40dBを超えると中等度難聴になります。
40dB以上の難聴となると流石にご本人も生活に不便を感じ、周囲の方も呼び掛けてもなかなか反応しないなど困ることが増えていきます。

 

補聴器と集音器の違い

聞こえに不便を感じ補聴器を検討し始めた時に、まずはその前に補聴器より安価で簡単に購入できる集音器を試される方が多くいらっしゃいます。

補聴器と集音器、見た目が似ているので同じようなものだと思いがちですが、機能が大きく違います。
集音器はどんな難聴のタイプの方に対しても同じ設定で音を大きくするものです。加齢に伴う難聴は高音から聴力が下がっていきますが、その程度は人によって様々です。合わない設定であれば、「音は大きく聞こえても人の声を聞き取りづらいまま」となります。また、大きな音が入ってきたときにそのまま音を増幅してしまうと、音響外傷といってかえって耳を傷めて難聴が進行してしまうかもしれません。

補聴器はその方の聴力にオーダーメイドで設定(フィッティング)していきます。
補聴器店によってもやり方は違うかもしれませんが、認定補聴器技能者が常在しているような補聴器専門店では、聴力に合わせて細かな設定をして、さらにその補聴器での効果測定を行い適切に使用できるかを確認してくれます。
補聴器は付けるとすぐに若い時のように聞こえるようになるわけではなく、補聴器で変換された電子音に脳が慣れる必要があります。また補聴器のつけ始めと、慣れてきた後では同じ聴力でも聞こえ方が違い設定を変えることもあります。
補聴器を初期設定した後も定期的に補聴器店に通うことをお勧めします。

集音器でも商品名に集音器と書かれていないこともあります。
どのように集音器と補聴器を見分ければよいのでしょうか。
一つのポイントとして、購入した時のままの音の設定で使用するもの、つまりご自身の聴力に合わせて音の設定をしていないものは集音器の可能性が高いです。逆に補聴器と呼ばれるものでも、聴力検査をせずにもともと設定してあるものを使うのではご自身の耳に合わないことが多く、かえって周りの音がうるさく聞こえたり、言葉が聞き取りづらくなったりします。

 

補聴器はいつからつけたらいいの?

一般的に平均聴力が40dBを超えるようであれば補聴器装用をお薦め致します。
前述したように、平均聴力が40dBを超えると中等度難聴と呼ばれ、日常生活に不便を感じることが増えていきます。
「俺は全然不便なんかしていない。ちゃんと聞こえている!」
と思われる方もいらっしゃると思いますが、実際は一緒に暮らしている方が呼びかけても返事がなく、大きな声で話さないといけないなど、周りの方が苦労していることも多々あります。
周りの意見を聞くことも重要です。

個人差は大きいですが、70歳を過ぎたあたりから全体的に聴力が低下しはじめ、生活に支障を来す方が増えていきます。
ですので、70歳を過ぎたら一度聴力検査を行うことをお薦め致します。

また難聴が軽度でも、お仕事で会話を確実に聞き取る必要がある方や大勢での会話を楽しみたい方、補聴に積極的な方は補聴器の適応になります。
平均聴力が正常範囲内の方でも、高音域のみ聞こえが悪い場合はその周波数のみ補聴器で大きくすることで言葉を聞き取りやすくすることも出来ます。

聞こえづらさに困難を感じ、補聴器を検討した際にはまず精密な聴力検査を行い、ご自身の聴力に合わせた補聴器を試して効果を確認することが一番だと思います。
多くの補聴器店では補聴器を購入前に試聴させてくれます。

 

検討したら早めに行動を

補聴器を検討したら、早めに行動することをお薦めします。
「ついに俺(私)も補聴器か~、いやだなぁ年をとって・・・」
と補聴器に対してネガティブに捉えている方が非常に多いと感じます。

外来に補聴器でご相談にいらっしゃる方々も、「重い腰を上げてやっと本日参りました」という方が多いです。

せっかく科学が進歩し、聞こえづらいものが聞こえるようになって生活を豊かにすることができる道具があるのであれば、それを購入できる状況にある方が試さないのは勿体ないと感じます。

ですが「高価なものを買って、使いこなせるか心配」という方も多いかと思います。

確かに、取り扱いや管理は高齢の方には簡単とも言い難いかと思います。

補聴器は最近とても小さく、目立たないものが多いです。
目立たないのはよいのですが、その分取り扱いも細かくなります。
小さな補聴器を耳にはめることや、電池の交換、失くさないように管理することは高齢になるほど難しくなります。多くの補聴器は空気電池といって使用しなくても2週間ほどで電池がなくなってしまうものが採用されており、ご自身で電池交換する必要があります。この電池がかなり小さいので、落としたり、交換で手間どうこともあるかもしれません。

補聴器の音に対しても脳が慣れる必要があるため、うまく使えるようになるまでにも数か月時間がかかります。高齢になればなるほど脳の適応も遅れてしまいます。
せっかく高機能で高価な補聴器を購入しても脳が適応する前に「うるさくて、つけられない!」と離脱してしまう方もいらっしゃいます。

そのため「いよいよダメだ」となる前に行動を起こすことが、補聴器を使いこなすポイントかと思います。

 

聞こえが悪くなると認知症が進行する!?

最近、難聴と認知症に強い関連があることが分かってきました。

認知機能低下の危険因子のうち予防可能な危険因子は35%あるといわれており、その中でも難聴が最も大きな割合を占めています。
つまり予防できる要因の中で、難聴が認知症の最も大きな危険因子であるということです。

以下、認知機能低下の危険因子のうち、予防可能な9因子です。

  • 難聴 9.1%
  • 15歳以下の低教育水準 7.5%
  • 喫煙 5.5%
  • 抑うつ 4.5%
  • 運動不足 2.6%
  • 社会的孤立 2.3%
  • 高血圧 2%
  • 糖尿病1.2%
  • 肥満 0.8%

(Dementia prevention,intervention and care G.Livingstoneなど:tha Lancet,July 19,2017)

また難聴者に補聴器をつける前と後で年ごとの言葉の記憶スコアをつけた研究では、補聴器をつけた後の方が言葉を忘れる度合いが5分の1になるという結果がでました。(Longitudinal relationship Between Hearing Aid use and Cognitive Function in Older Americans;A.Maharamなど2018)

つまり補聴器をつけて聞こえるようにすることで、物忘れなどの認知症の進行を予防することができると言えます。

確かに聞こえづらくなると、人との会話が億劫になり会話に参加しなくなり、会話の内容がわからず表情も乏しくなります。
音としては聞こえていても、加齢に伴う難聴は言葉が不明瞭になり会話を聞き取ることが難しく、特に飲み会のように周りが騒がしいところではより聞き取れなくなります。

話しかける側としても大きな声で話す必要があり、必要なことは伝えても、そこまで重要ではない雑談程度の会話は敢えて話しかけなくなっていく傾向にあります。ちょっとした雑談が減ると、会話する楽しみも減ってしまいます。

さらには今まで参加していたコミュニティーにも行かなくなり、社会的に孤立する人が増加します。こうして、人との関わり合いが減ることは認知機能低下へ繋がります。

ひとたび認知症が始まると、補聴器のハードルも高くなります。
「補聴器をどこかに置いてきてしまった」
「補聴器をどこにしまったかわからない」
「電池交換を忘れて、電池切れの補聴器を使用していた」
「補聴器店にメンテナンスに行くことを忘れた」
「聴力検査が正確にできないので今の聴力が把握できない→補聴器の調整が難しい」

こうなると、なかなか補聴器を有効に使うことは難しいかと思います。
そして、認知症→補聴器が難しい→難聴進行→認知症進行の悪循環となります。

 

聴力の老化以外にも、意外な難聴の原因
~前から聞こえは悪かったけれど、最近特に聞こえないみたい~

ご高齢の方で、時々「前から聞こえは悪かったけれど、最近特に聞こえないみたい」とご家族に付き添われながらいらっしゃる方がいます。

ご本人は「私はもう前から耳は聞こえないのよ~」とおっしゃいますが、ご家族が「耳はもともと遠かったのだけど、最近特に聞こえが悪い様子なのです」とおっしゃり、耳を拝見してみると、耳垢がぎっしり詰まっていた!ということが度々あります。

耳垢をすべて取ると、「聞こえるようになった!」と表情が明るくなり、診察後の待合室ではいらしたときより明らかにご家族との会話がスムーズになっている、といったことがあります。

耳垢のせいで聞こえづらくなりコミュニケーションに支障がでてしまうのは非常にもったいないことです。

耳垢を疑った際には、耳鼻咽喉科受診をお勧めします。

 

補聴器が必要になるということは、体が元気な証拠
 ~前向きで、積極的な方ほど、補聴器を使用されています~

多少の差はあれ年齢とともに、誰でも聴力は低下していきます。

加齢に伴う難聴で補聴器をつける、というと「年を取った」というイメージを抱きがちです。
「聞こえづらくて少し不便だけれど、まだそこまで生活に支障はでていないし、そもそも補聴器をつけるなんでかっこ悪くて嫌だなぁ。」と感じる方が多くいらっしゃいます。

補聴器の見た目、という点では、以前よりもかなり小型化されて一見補聴器をしているように見えないものが多数あります。また、最近は若者でもワイヤレスイヤホンを使用している人が多いので、耳に何か挿入していることはありふれた光景でもあります。

加齢に伴う難聴は今のところ改善することはありません。
軽度難聴のうちはかえって補聴器をすると音が聞き取りづらく感じることもあるかと思いますが、ある程度進行したら、早いうちから補聴器の音に脳が慣れておくことによって徐々に聞き取れるようになり、難聴が進行した際にも適応することができます。

私は、補聴器を活用している方は前向きで積極的な方が多いと感じています。
「いつまでも現役で仕事を続けたいと思っている方」
「周囲とのコミュニティーを大切にしている方」
「新しいものにチャレンジしたいと好奇心旺盛な方」
「ご家族から大切にされている方」
が多い印象です。

最近の補聴器は色々便利な機能が付いており、テレビの音をブルートゥースで飛ばして直接耳元から聞こえるようにしたり、スマートフォンと連動して音の調整を行ったりできるものもあります。

 

是非補聴器を上手く活用して、難聴が進行しても人との会話や楽しい時間が長く持てるようにして頂きたいと思います。

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