メニュー

子供(特に保育園児)の鼻水は治る?近年、アレルギー性鼻炎の低年齢化が進んでいるのが原因かも

[2021.02.25]

鼻水は保育園(もちろん幼稚園も)に通わせる保護者の方の共通の悩みです。
0歳~1歳で保育園に通いたての頃は特に鼻水がすぐに出て、すぐに熱を出し、保護者の方は仕事の調整に追われ冷や冷やしながら過ごすことも多いのではないでしょうか。
初めの1年はほとんど保育園に通えなかったという話もよく聞きます。

幼稚園児も同様に鼻水が止まらなくて困ることがあると思いますが、一番難渋するのは、やはり保育園通いたての2歳未満の子供達かと思います。(※保育園児と限定するわけではありませんが、あくまで傾向が強いということです。自宅保育でも兄弟が保育園や幼稚園で持続的に鼻水がでていると、同じように鼻水が止まらないこともあります。)

この鼻水を止めることはできるのでしょうか?

≪目次≫

  1. 保育園に通いたての子供の鼻水はほとんどがウイルス性
  2. 子供の免疫力
  3. 子供のアレルギー性鼻炎の低年齢化が進んでいる
  4. 風邪が続くとすぐに副鼻腔炎になる子供に、抗生剤はいつ使うのか?
  5. いつも鼻が詰まって口呼吸に、中耳炎にもよく罹る
  6. 風邪に対する抵抗力をあげるには?

 

1.保育園通いたての子供たちの鼻水はほとんどがウイルス性

保育園児の鼻水はほとんどが鼻風邪です。いわゆる「風邪」というのはウイルス感染によるもので、インフルエンザウイルスやヘルペスウイルスなど一部のウイルスを除き、抗ウイルス薬はありません。ウイルスを退治するのは自分自身の免疫です。
よく「風邪気味だから早めに抗生剤を」と言われる方がいらっしゃいますが、抗生剤は細菌を殺す薬なのでウイルスには効きません。もし抗生剤を飲んでよく効いたのであれば、それは風邪ではなくどこかの細菌感染による症状だと思います。

2020年は世界的に新型コロナウイルスが流行し、その感染対策の一つとして「手で顔を触らない、鼻をいじらない」と言われました。
ウイルスのついた手で鼻の中を触ってしまったり、近くの子供が目の前でくしゃみをしてその飛沫を浴びたりしてウイルス感染すると、鼻から入ってくるウイルスを外へ出そうとして鼻水が出てきます。

それだけ聞くととてもありがたい鼻水のように思いますが、実際のところ鼻水が出ていると鼻が詰まって夜眠れなかったり、小さい子供は鼻水が濁ってきて咳や熱が出たりと困った症状が起こります。
本来であれば、風邪の症状があれば数日間は保育園をお休みして自宅でゆっくり過ごすことが良いでしょう。しかし今は両親とも働いている家庭が増え、「熱が高い」以外の症状(例えば、鼻水の量が多い、咳がでる)ではなかなか保育園を休むことはできません。

保育園をやめてずっと家にいれば鼻水は止まります。でもそれは解決策にはならず非現実的と言えるでしょう。

そもそもどうして子供はこんなに風邪をひくのでしょうか?

 

2.子供の免疫力

生まれたばかりの赤ちゃんはお母さんからウイルスや細菌と戦う「抗体」をもらっているため比較的風邪は引きづらいです。

抗体とは、免疫グロブリンというタンパク質の事で、異物と認識したものに特異的にくっつくことで、その異物を倒しやすくする働きがあります。そして一度抗体を作ると次に同じ異物が来た時に、前に抗体で戦ったことを覚えていて、最初に戦った時よりもより簡単に異物を倒すことができます。これを獲得免疫と言い、予防接種はこの仕組みを応用しています。

抗体すなわち免疫グロブリンには、IgG・IgA・IgM・IgD・IgEの5つの種類があります。
中でも子供の免疫力を考えるときに重要なのがIgGとIgAです。

 

① IgG

IgGという抗体はお母さんから胎盤を通して赤ちゃんに移行します。

IgGは細菌やウイルスなどの病原体が侵入してきた際に、病原体と結合してそれらの働きを止めたり、他の免疫細胞と連携して病原体をやっつけたりします。母親からもらったIgGは生後6か月くらいで消えていくので成人の半分以下になり、感染症にも罹りやすくなります。その後は赤ちゃんが自分自身で抗体を作る必要があるため、色々な病原体に感染して少しずつ抗体の量を増やしていくことになります。

 

② IgA

IgAという抗体は分娩0~5日間頃に分泌される母乳(初乳)に含まれています。通常の母乳と比べてどろっとしており、タンパク質や脂肪も多く赤ちゃんの栄養ドリンクのようなものです。

IgAは消化管や呼吸器の粘膜を保護しており、初乳を飲んだ赤ちゃんの消化管粘膜はIgAによって腸内の病原体から守られています。

 

以下、年齢と抗体(免疫グロブリン)の図です。

(どうして発症するのe-免疫.com)

 

生まれて6か月程度で抗体値は最低値となり、その後は少しずつ上昇していきます。
ウイルス感染に重要なIgGは5歳程度で上昇の傾きは緩やかになり、10歳でだいたい成人と同じくらいになります。そのため保育園に通う年齢の子供たちは抗体も少ない上に、集団保育でたくさんのウイルスがいる環境で過ごしているため次々と色々なウイルスに感染し風邪をひくわけです。

保育園児の鼻水の多くはウイルスによるものとお話しましたが、それ以外にも原因はあります。

 

3.子供のアレルギー性鼻炎の低年齢化が進んでいる

鼻水の原因の一つとして、アレルギー性鼻炎があります。また近年アレルギー性鼻炎の低年齢化が問題となっています。
2歳未満でアレルギー性鼻炎を発症することは稀ですが、2歳過ぎても毎日透明な鼻水がいっこうに止まらない、目もよく痒がるなどの場合は一度アレルギー検査を行うことをお薦めします。

通常アレルギー検査は採血で行いますが、採血が難しい年齢のお子様は、「イムノキャップラピッド」という指先からハンコのように採血が可能な専用キットを使用して8項目調べることが出来ます。

詳細はこちら(外部リンク)⇒www.allergyinsider.com/20min

 

~検査方法~

指先にハンコを押すようなイメージで専用のキットで針を刺し、そこから血を取ります。調べられる項目は、スギ・ヤヒョウダニ・イヌ・ネコ・カモガヤ・ブタクサ・ヨモギです。

他にも鼻汁を綿棒で拭い、アレルギー性鼻炎の時に増加する好酸球(こうさんきゅう)の測定を行うことも診断方法の一つです。

 

4. 風邪が続くとすぐに副鼻腔炎になる子供に、抗生剤はいつ使うのか?

風邪はウイルスによるものとお話しましたが、初めはウイルスによる鼻水でも途中から細菌感染して膿混じりの鼻水(副鼻腔炎)になることが良くあります。

「急性ウイルス性鼻副鼻腔炎(いわゆる鼻風邪)であれば、特別な治療をしなくとも10日以内に治癒する。膿性鼻汁が10日間以上持続する場合、また5~7日後に悪化をみる場合は細菌の二次感染による急性細菌性鼻副鼻腔炎(いわゆる副鼻腔炎)と診断する。」(急性鼻副鼻腔炎ガイドライン2010年)と言われています。

そのため風邪で鼻水が出たときは、数日間抗生剤を飲まずに様子をみて、治りが悪く膿性鼻汁になってきたら抗生剤投与を検討することになります。また軽症に限っては抗生剤を投与せずに自然経過を観察することが推奨されています。

しかし実際に診療していると鼻水が出始めて2~3日でどろどろで黄色い膿性鼻汁となり抗生剤を使用した方が良さそうな子もいます。必要ない抗生剤の処方はしたくないと思う一方、悪化させてから抗生剤を飲むのではなかなか治りが悪く、熱や咳などの症状も出てきてしまうというジレンマがあり、子供の白濁した鼻汁はどの段階で抗生剤を飲ませるかというのは非常に難しいと常々感じています。

それぞれ免疫力の違いもあり、同じような年齢、症状でも治りやすい子と悪化しやすい子がいます。兄弟でも違います。そのため前回の薬の効き具合や症状の経過を聞きながらその子の傾向を掴む必要があります。

また保育園児の特徴として、園では薬を飲ませられないので1日2回の薬を希望されます。抗生剤の多くが1日3回飲む薬であるため、1日2回では血中濃度が保てず薬が効きづらくなります。元々1日2回の用法のものもありますが、数は少なくその薬が効かなかった時に困ります。

さらに子供の副鼻腔炎の兆候として、湿性咳嗽(痰や鼻水を伴う咳のこと)や後鼻漏(鼻水が喉を伝って降りていくこと)があります。前述したように5歳未満の子は抗体が少なく副鼻腔炎に移行しやすい傾向があります。実際には、3歳未満か以上かで副鼻腔炎に移行する率が違うような印象を受けます。

これらの状況を踏まえ、診察時に抗生剤を処方するか決めています。

 

5,いつも鼻が詰まって口呼吸に、中耳炎にもよく罹る

「常に口呼吸をしていて、しょっちゅう副鼻腔炎にも中耳炎にもよく罹る」という子の中には鼻の一番突き当りにある「アデノイド」というリンパ組織が肥大している可能性があります。アデノイドを評価するには経鼻ファイバーやレントゲンが用いられます。
当院では小児にも使用できる細径(先端2.6mm)のファイバーを用いて診断します。

アデノイドが肥大していると、鼻呼吸をするための空気の通り道が狭くなり、常に口呼吸になります。また鼻水が喉に流れず鼻の奥で停滞するため、手前には鼻水は出てこないのにいつも鼻の奥でズビズビと音がします。

さらに耳と鼻を繋いでいる耳管(じかん)という管がちょうどアデノイドの横に開口しているため、その部分に鼻水がいつも停滞していると鼓膜の奥の換気が保てず、中耳炎に罹り、なかなか改善しません。

アデノイドは誰にでも存在するものであり、小学校に上がると少しずつ退縮し大人でアデノイドが肥大している方はほとんどいません。しかしアデノイドの肥大が高度で常に口呼吸・いびきがひどい・夜間呼吸が止まる・何度も副鼻腔炎や中耳炎に罹患する、などの症状が重なる子は、全身麻酔下でアデノイド切除術を行うとそれらの症状が劇的に改善します。

 

6,風邪を引かないようにするには

風邪を引かないようにするには、自分自身の抵抗力を上げることが一番です。結局のところは、昔から言われているように「よく食べ・よく寝て・よく遊ぶ」ことが大切だと思います。

新型コロナウイルスの対策も、特殊な予防策ではなく以前から言われていたことを徹底して行うことが重要でした。保育園児の場合、遊ぶと食べるは少なくとも日中は保育園でやってくれるので、早く寝かせることに重点を置けば良いかと思います。

それ以外に出来ることとしては、漢方薬を併用することも良いでしょう。風邪の引き始めで麻黄湯や葛根湯などを飲むと免疫細胞が活性化し治りやすくなります。子供にとっては味の問題でややハードルは高くなりますが、お砂糖やはちみつ(はちみつは1歳未満はダメです)をたくさん入れて与えると案外飲めたりします。

あとは鼻水が出たときは自宅で鼻吸引を頻回にやることも重要です。最近はインターネットで色々な種類の吸引器を購入することができます。

また2020年から流行し始めた新型コロナウイルスに対して、全世代で手洗い、アルコール消毒、マスク着用を基本とした感染対策が行われていますが、それにより毎年流行していたインフルエンザが2020年~2021年の冬には全くと言っていいほど流行しませんでした。インフルエンザはインフルエンザウイルスにより発症するので、その他の風邪の原因となるウイルス感染に対しても手洗い、アルコール消毒、マスク着用が重要であることが分かります。

「うちの子供はすぐに鼻水がでるし、なかなか治らないなあ」と悩みながら日々慌ただしく過ごしていて、3歳を過ぎたあたりで「そういえば、最近鼻水止まったなあ、熱も出していない!」という経過を辿る方が多いように思います。

 

【文献】

  • 急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年
  • Antimicrobial treatment guidelines for acute bacterial rhinosinusitis: Sinus and Alllergy health partnership. Otolaryngol Head Neck Surg 123: S4-32, 2000
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME