【外耳道真菌症】~耳にもカビが生える!耳掃除をして綿棒に黒いものがついた!~
突然ですが、耳の中にも「カビ」が生えることをご存知でしょうか?
表題の真菌というのはカビのことです。
耳にカビが生えるというと、よほど抵抗力が落ちている方がなるのではないかと思われるかもしれません。
しかし意外と健康な成人でも罹る比較的身近な病気です。
今回は直近1年間に当院で外耳道真菌症を治療した方の特徴をまとめて、その症状や治療法を書いています。
目次
・外耳道真菌症とは
・当院で最近1年間に外耳道真菌症と診断した方の特徴
・治療法
・まとめ
外耳道真菌症とは
外耳道真菌症とはその名の通り、外耳道に真菌(しんきん)つまり「カビ」が生えることです。
外耳道炎の中で、原因がカビのものといってもよいでしょう。外耳道炎は通常、細菌が原因です。
細菌は抗生剤で治療しますが、真菌には抗生剤が効きません。
一般的な外耳炎の治療と外耳道真菌症は使用する薬が異なるので正確な診断をする必要があります。
外耳道真菌症は、犬を飼っている方は知っている方もいるのではないでしょうか?
とくに垂れ耳の犬は耳(外耳道)が蒸れやすく、外耳炎になることが多いようです。
人間同様、細菌や真菌が耳(外耳道)に感染することが原因となります。
患者さんからは、
「耳にカビが生えることがあるんですか?」
「どこからカビがつくんですか?」
と言われますが、カビは空気中を浮遊していることもあれば、元々常在菌として皮膚や口腔内や膣などに潜んでおり、抵抗力が落ちたときに異常増殖する場合もあります。
かなり抵抗力が落ちている方だけが罹るのかと思いきや、案外健康な成人が罹患することも多く、誰がかかってもおかしくない病気だと思います。
当院で最近1年間に外耳道真菌症と診断した方の特徴
・2024年11月1日~2025年11月1日までに当院で外耳道真菌症と診断、治療した方は16名でした。ひと月当たり1-2名です。
当院は外耳道真菌症に特化したクリニックでもなく、皆さん近隣の方だったのでおそらく他のクリニックも同様の頻度ではないかと思います。
・年齢は20代~80代まで様々ですが、30-40代の方が半数以上でした。皆さん基本的には持病のない健康な方です。
・性別は女性13名、男性3名と圧倒的に女性の方が多かったです。
文献でも女性の方が罹患しやすいと書かれたものが多く、恐らく女性の方が耳かきを頻繁にして外耳炎になってしまう方が多いからではないかと推測しています。
・初診時の症状は
「急に聞こえづらくなった」
「耳に水が入った感じがとれない」
「耳の中がかゆい」
「以前から外耳炎でなかなか治らない」
「耳の奥が痛くて、顎まで痛くなった」
「綿棒に血がついて、血まじりの耳垂れがでる」
といったもので、これらは細菌性の外耳炎の症状とほとんど変わりません。
症状だけでは外耳道真菌症かどうかは分かりません。
16名中少なくとも6名の方は以前から外耳炎を繰り返しており、以前は細菌性のいわゆる普通の外耳炎でした。外耳道が細菌感染で荒らされて状態が悪くなると真菌が増えやすくなるからでしょう。
・次に原因菌です。
真菌にも色々種類がありますが、外耳道真菌症を引き起こす真菌は主に「カンジダ」と「アスペルギルス」です。
基本的に外耳道真菌症を疑ったら、培養といって耳に綿棒みたいなものを入れて検査に出して、本当に真菌が原因かを調べます。
その際に真菌の種類もわかります。(検査に出して結果がでるまで7-10日程度かかります。)
今回の調べでは、カンジダ単独5名、アスペルギルス単独6名、カンジダ+アスペルギルス同時感染3名、その他の真菌2名でした。
・カンジダとアスペルギルスにはそれぞれ特徴があります。
まずカンジダは、見た目は白くてべたっとして白い菌糸が見えたり、鼓膜付近に存在していることが多いです。
鼓膜付近の処置しづらいところに付着しているため比較的に治療に難渋する方が多い印象です。
以下の2枚はカンジタの画像です。耳の穴にべたっとしたカンジタが付着しています。2枚目は鼓膜付近の画像で、鼓膜に近いところに白っぽいカンジタが付着しています。


特に外耳道が弯曲し鼓膜と外耳道が一部見えない部分があると薬が塗りづらくいつまでも治らないこともあり、耳鼻科医泣かせの菌ではないかと思っています。
一方、アスペルギルスは、黒色のつぶつぶした胞子が見え菌糸も目立ちます。
以下の4枚の画像はアスペルギルスの画像で1,2枚目は耳の中に黒っぽい胞子が見えます。
3枚目は耳垢にアスペルギルスが付着しています。
4枚目は耳の中をぬぐった綿棒に黒い色がついています。




今回の調べでも、外耳道内に黒いものが見えた方は皆さん培養検査でアスペルギルス陽性でした。
先程、外耳道真菌症にご自身で気づくのは難しいと書きましたが、唯一気づく方法としては綿棒の先に墨のような黒いものが付着したらアスペルギルスかもしれません。
こちらの画像はアスペルギルスの方の外耳道を綿棒でぬぐったときの写真です。
このような状態であれば早めに耳鼻科を受診してください。
黒い綿棒だとわからないですけどね。
アスペルギルスはカンジダに比べて治りやすい印象です。
カンジダの方は数か月かかることもありますが、アスペルギルス方はだいたい3回くらい通院して治癒していました。
また真菌と細菌の同時感染も多く、11名の方が真菌に加え何かしらの細菌にも感染していました。特に緑膿菌やMRSAといった耐性菌が検出される方もおり、このような方はさらに治療が長引く傾向があります。
治療法
外耳道真菌症の治療は非常にシンプルです。
外耳道内の胞子やべたっとした分泌物をきれいに取り除き、抗真菌薬の軟膏を塗布します。
外耳道真菌症は、一般的には抗真菌剤の内服は行わず抗真菌薬の軟膏を塗布します。頻回な処置が基本です。
自宅でも軟膏を自身で塗布してもらうのですが、カンジダが原因の方はカンジダが鼓膜の上や鼓膜に非常に近いところに存在するのでしっかり塗布することが難しく、それも治療が長引く原因かと思います。
少しでもカビが残っていると数日で増殖するので非常に厄介です。
外耳道真菌症に使える点耳薬が発売されれば治療がしやすくなるのに、といつも考えています。
まとめ
外耳道真菌症は健康な方にも起きる病気です。
耳かきをしすぎて細菌性の外耳炎を繰り返している方がなりやすいので、頻回な耳かきはしないようにしましょう。
また綿棒に黒いものが付いたら耳鼻科を受診しましょう。
今回のコラムは如何だったでしょうか?
外耳道真菌症の特にカンジダが原因の方の治療は、私自身もより良い治療法や処置がないか試行錯誤しています。いずれにしろなかなか治らない外耳炎は早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
今回のコラムで気になる症状があった方は、一度耳鼻科に行ってみてください。
